PART 26

 

46 - 砂丘章〔アル・アハカーフ

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. ハー・ミーム。 

 

     2. この啓典の啓示は,偉力ならびなく英明なアッラーから(下されたもの)である。 

 

     3. われは,真理と期限を定めずには,天と地,そしてその間の凡てのものを,創造しなかった。だが信仰しない者は,かれらに警告されたことから背き去る。 

 

     4. 言ってやるがいい。「アッラーを差し置いてあなたがたが祈るものに就いて考えないのか。かれらが,大地で創ったものが何かあるのなら,わたしに見せるがいい。また天の創造においてかれら(偶像)の参与があるとでもいうのか。もしあなたがたの言葉が真実なら,これ(クルアーン)以前の啓典かまたは(古代入)の知識のかけらでもよいからわたしに(西?)せ。」 

 

     5. アッラー以外のものを,祈る者より迷っている者が外にあろうか。これらの者は,復活の日まで答えは得られない。またかれら(神々)は,その祈りに気付かない。 

 

     6. また人間が(審判に)集められた時,かれら(神々)は,かれらに対し敵となり,かれらへの崇拝など,認めることもない。 

 

     7. われの明白だ印が,かれらに読誦されると,信仰しない者はかれらの許に来た真理に就いて言う。「これは明らかに魔術です。」 

 

     8. またかれらは,「かれ(ムハマンド)が,それ(クルアーン)を捏造したのです。」と言う。言ってやるがいい。「もしわたしがそれを捏造したのなら,あなたがたはアッラーから(の恩恵を),何もわたしにあずからせないであろう。かれはあなたがたが,それ(クルアーン)に就いて語ることを最もよく知っておられる。かれは,わたしとあなたがたの,立証者として万全であり,かれは寛容にして慈愛ぶかき御方であられる。」 

 

     9. 言ってやるがいい。「わたしは使徒たちの中の革新者ではない。(何故なら)わたしに,またあなたがたに何がなされるのかをわたしは知らない。只,わたしは啓示されたことに従うだけであり,わたしは,公明な一人の警告者に過ぎない。」 

 

     10. 言ってやるがいい。「あなたがたは考えて・たのか,もし(クルアーンが)アッラーの御許からであり,それをあなたがたは拒否し,しかも,イスラエルの子孫の一人がそれ(ムーサーの律法)と,同じものであると立証し,それでかれ自身クルアーンを信じたのに,あなたがたは(なお)高慢にも信じなかったとすれば(あなたがたは不義の徒になるのではないのか)。本当にアッラーは,不義の民を御導きになられない。」 

 

     11. 信じない者は信仰する者に言う。「もしこの(クルアーンを信じること)が良いのであれば,かれらがわたしたちに,先んじる筈はない。」またかれらはそれによって,導きなどを受けないのであるとして,「これは昔の作り話しです。」と言う。 

 

     12. しかしこの(クルアーン)以前にも導きがあり,慈悲であるムーサーの啓典(律法)があった。それにこれは,アラビア語でそれを確証する啓典で,悪業をなす者への警告であり,また善行に勤しむ者ヘの吉報である。 

 

     13. 本当に「わたしたちの主は,アッラーです。」と言い,その後(その道において)堅固な者には恐れもなく,憂いもない。 

 

     14. これらは楽園の住人で,その中に永遠に住む。(それが)かれらの(善)行に対する報奨である。 

 

     15. われは,両親に対し優しくするよう人間に命じた。母は懐胎に苦し・,その分娩に苦しむ。懐胎してから離乳させるまで30ヶ月かかる。それからかれが十分な力を備える年配に達し,それから40歳にもなると,「主よ,わたしと両親に対して,あなたが御恵・下された恩恵に感謝させて下さい。またあなたの御喜びにあずかるよう,わたしが,善行に勤しむようにして下さい。また子孫も,幸福にして下さい。わたしは悔悟してあなたの御許に帰ります。本当にわたしは,服従,帰依する者です。」と言うようになる。 

 

     16. これらの者は,われがその行いの中最善のものを受け入れる者たちで,様々な誤った行いは見逃し,楽園の住人の中(に入る者)であろう。これはかれらと結ばれた,真実の約束である。 

 

     17. だが自分の(信心深い)両親に向かって言う者がある。「ああ,いやだ2人とも,わたしが甦らされるのですか。わたし以前に幾世代も過ぎ去って(誰一人生きかえっていない)ではありませんか。」両親はアッラーの御助けを願って(言った)。「まあ,情けないこと。あなたは信仰しなさい。本当にアッラーの御約束は真実なのです。」それでもかれは,「これは昔の物語に過ぎない。」と言う。 

 

     18. これらの者は,以前に滅び去ったジンや人間の民族の中にいる者で,御言葉が,かれらに実証される者たちである。かれらは,本当に(完全な)失敗者である。 

 

     19. 各人には,その行ったことに応じて種々の段階がある。これはかれが,行為に対して(完全に)報われるためで,決して不当に扱われることはない。 

 

     20. 不信心者たちが,獄火の前に晒されるその日,「あなたがたは現世の生活において,様々な良いものを得ながら,それを自ら享楽した。それで今日は,恥ずべき懲罰で報いられよう。あなたがたは地上で真理を無視し,高慢であり,また(アッラーの)掟に背いていたことに対して恥ずべき懲罰で報いられよう。」(と仰せられるであろう)。 

 

     21. アードの同胞〔フード〕を思い起こしなさい。われがかれの民を砂の丘で戒めた時,確かにかれ以前にもまた以後にも,警告者たちが来て,「アッラーのほか崇拝してはならない。本当にわたしは,偉大な日の懲罰を,あなたがたのために恐れる。」(と言った。) 

 

     22. かれらは言った。「あなたは,わたしたちを神々から背かせるために来たのですか。もしあなたの言葉が本当なら,わたしたちを威しているものを(?)しなさい。」 

 

     23. かれは(答えて)言った。「その知識はアッラーに(だけ)あり,わたしは下されたものをあなたがたに伝えるだけである。それにしても,あなたがたは,分ろうとしない愚か者である。」 

 

     24. その時,黒雲がそれぞれの谷に押し寄せて来るのを見て人々は言った。「この雲では,一雨来るぞ。」すると(声があった)。「いや,それはあなたがたが催促するもの。それに伴う風こそは痛ましい懲罰で, 

 

     25. それは主の御命令を奉じて,凡てのものを壊滅し去る。」それで朝になると,かれらの住・かの外,何ものも見られなかった。われはこのように,罪を犯した民に報いる。 

 

     26. われは,実にあなたがた(クライシュ族)にも与えなかった力を,聴覚と視覚と心をかれらに授けた。それでもかれらは,アッラーの印を認めなかったため,その聴覚と視覚と心は,全くかれらを益することなく,かれらは自分の嘲笑していたものに,取り囲まれてしまった。 

 

     27. 本当にわれはあなたがたの周囲の数々の町村を滅ぼし,わが印を示した。(それで)かれらが(われに)帰る(ように)。 

 

     28. アッラーに近付こうと,かれらがかれを差し置いて神として拝したものたちは,何故かれらを助けなかったのか。いや(助けるどころか)偶像はかれらから姿を消してしまった。これは,(偶像を崇めるかれらの論理)かれらの偽作であり,また捏造したものであった。 

 

     29. われが,クルアーンを聞きたいというジンの仲間をあなたに差し向けた時のことを思い起しなさい。かれらがその場に臨むと栗いに,「謹んで聴きなさい。」と言った。やがてそれが終ると,警告のためにその民の所に帰って行き警告した。 

 

     30. かれらは言った。「わたしの人々よ,わたしたちはムーサーの後に下された啓典を確かに聞きました。(それは)それ以前に下されたものを確証し,真理と正しい道に導くものです。 

 

     31. わたしたちの人々よ,アッラーに招く者に答えて,かれを信じなさい。かれは,あなたがたの様々な罪を赦し,痛ましい懲罰から御救いになられる。 

 

     32. アッラーの招きに答えない者は,地上においてかれ(の計画)を挫くことなど出来る筈はない。またかれらには,かれの外に保護者はない。これらの者は明らかに迷いに陥っている者である。」 

 

     33. かれら(マッカの多神教徒)は,天と地を創造なされ,その創造に疲れることもないアッラーが,死者を甦らせることくらい,できるとは思わないのか。いや,かれは凡てのことに全能であられる。 

 

     34. 信仰しない者が,火獄の前に晒される日。(かれらは間われよう。)「これは真実ではないのか。」かれらは(答えて),「本当でした。わたしたちの主に誓けて。」と言う。かれは仰せられよう。「あなたがたは不信心であったことに対する懲罰を味わえ。」 

 

     35. あなたは耐え忍ベ。(且つて)使徒たちが,不屈の決意をしたように耐え忍べ。かれら(不信心の者)のために急いではならない。かれらに約束されたこと(懲罰)を見る日,まるで(死から復活までの期間を)一日の中のほんの一時しか過してはいなかったかのように(思うであろう)。(これはアッラーからの)御達しである。滅ぼされるのは,(アッラーの)掟に背く者たちだけである(ということを)。

 

47 - ムハンマド章

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 信仰しない者,また(人びとを)アッラーの道から妨げる者には,その行いを迷わせられる。 

 

     2. 信仰して善行に勤しむ者,またムハンマドに下されたものを主からの真理として信仰する者には,かれはその罪障を消滅し情況を改善なされる。 

 

     3. それも,信仰しない者が虚偽に従い,信仰する者が主からの真理に従うためである。このようにアッラーは,人びとのために比喩により(教えを)説かれる。 

 

     4. あなたがたが不信心な者と(戦場で)見える時は,(かれらの)首を打ち切れ。かれらの多くを殺すまで(戦い),(捕虜には)縄をしっかりかけなさい。その後は戦いが終るまで情けを施して放すか,または身代金を取るなりせよ。もしアッラーが御望・なら,きっと(御自分で)かれらに報復されよう。だがかれは,あなたがたを栗いに試・るために(戦いを命じられる)。凡そアッラーの道のために戦死した者には,決してその行いを虚しいものになされない。 

 

     5. かれは,かれらを導きその情況を改善なされ, 

 

     6. かねて告げられていた楽園に,かれらを入らせられる。 

 

     7. 信仰する者よ,あなたがたがアッラーに助力すれば,かれはあなたがたを助けられ,その足場を堅固にされる。 

 

     8. また信仰なき者には滅亡(があるだけ)で,その行いを迷わせられる。 

 

     9. それというのも,かれらがアッラーが下されたものを嫌ったためで,かれはその行いを無効になされる。 

 

     10. あなたがたは地上を歴遊して,かれら以前の無信仰な者たちの最後がどうであったかを見なかったのか。アッラーはかれらを全滅なされた。不信者(の運命)もこれと同じ(運命)である。 

 

     11. それはアッラーが,信仰する者の守護者であられ,不信心者には守護者がないためである。 

 

     12. 本当にアッラーは信じて善行に動しむ者を,川が下を流れる楽園に入らせられる。そして信仰しない者には,(現世の生活を)楽しませ,家畜が食うように大食させて,業火をかれらの住まいとする。 

 

     13. われはあなたを追放した町(マッカ)よりももっと強い多くの都市を滅ぼしたが,かれらには援助者もなかった。 

 

     14. それで主からの明証の上にいる者と,自分の悪行を立派なものと考え,私欲に従う者とが同じであろうか。 

 

     15. 主を畏れる者に約束されている楽園を描いて・よう。そこには腐ることのない水を湛える川,味の変ることのない乳の川,飲む者に快い(美)酒の川,純良な蜜の川がある。またそこでは,凡ての種類の果実と,主からの御赦しを賜わる。(このような者たちと)業火の中に永遠に住・,煮えたぎる湯を飲まされて,腸が寸断する者と同じであろうか。 

 

     16. かれらの中には,あなたに耳を傾ける者もある。あなたの前を出て行くと,知識を授かっている者たちに向かって,「かれが今言ったことは,一体何ですか。」と訊ねる。これらの者は,アッラーに心を封じられた者で,自分の私欲に従う者である。 

 

     17. しかし導かれている者たちには,(一層の)導きと敬度の念を授けられる。 

 

     18. かれら(にせ信者)は,その時(最後の審判)を待つほかはない。それは突然かれらに下る。その兆候はすでに下っている。それ(時)が来たとき,かれらは警告をどう役立てるのか。 

 

     19. だから知れ。アッラーの外に神はないことを。そしてあなたの罪過に対し御赦しを請え。また信仰する男たち,信仰する女たちのためにも御赦しを請え。本当にアッラーは,あなたがたの働き振りも,休・方も(凡て)知っておられる。 

 

     20. 信仰する者たちは,「どうして1章〔スーラ〕が下って来ないのか。」と言う。ところが断固たる1章が下され,その中で戦闘のことが述べられると,心に病の宿る者たちは,今にも死に臨むような弱々しい瞼であなたを見よう。災あれ(かれらは死んだ方がいい。) 

 

     21. 服従することと,公正に言うこと(の方が大事である)。事(戦闘)が,決定された時は,アッラーに忠誠であることがかれらのために善い。 

 

     22. あなたがたが,もし御命令に背き去ったりして,地上に退廃を(打?)し,また血縁の断絶となるようなことを期待するのか。 

 

     23. これらの人々は,アッラーが見限った者で,聾唖(者)にされ,その目も盲目になされる。 

 

     24. かれらはクルアーンを熟読玩味しないのか。それとも心に鍵をかけたのか。 

 

     25. 本当に導きが明らかにされた後それから背き去る者は,悪魔に唆され,誤った願望の虜となる。 

 

     26. それはかれらが,アッラーの下されるものを嫌う者に向かって,「わたしたちは場合によっては,あなたがたに従いましょう。」と言ったためである。だがアッラーはかれらの秘密を知っておられる。 

 

     27. 天使たちが,かれらを召しよせ(死んでしまうこと)かれらの顔や背を打ったならどうであろうか。 

 

     28. それというのもかれらがアッラーの御怒りになることばかりを行い,かれの御喜びになられることを嫌ったため,かれがかれらの行いを虚しくしたのである。 

 

     29. それとも心に病を宿す者は,自分たちの(密な)悪意をアッラーが明る・に出されないとでも考えるのか。 

 

     30. もしわれが欲するなら,かれら(偽信者)をあなたに指し示し,その特徴によって識別出来,また(かれらは)言葉の調子によっても分る。本当にアッラーはあなたがたの行うことを知っておられる。 

 

     31. われはあなたがたの中,努力し,耐え忍ぶ者たちを区別するためにあなたがたを試・る。またあなたがたの言行をも確める。 

 

     32. 本当に信仰しない者,そして(人びとを)アッラーの道から妨げ,また導きが明らかにされた後使徒に反抗する者たちがいるが,少しもアッラーを損うことは出来ない。かれは,かれらの行いを虚しくなされる。 

 

     33. あなたがた信仰する者よ,アッラーに従い,また使徒に従え。あなたがたの行いを,虚しくさせてはならない。 

 

     34. 本当に信仰しないで,アッラーの道から(人びとを)妨げ,不信者として死ぬ者を,アッラーは決して御赦しにはなられない。 

 

     35. だから落胆してはならない。和平を唱えてはならない。あなたがたは勝利を得るのである。アッラーは,あなたがたと共におられる。決してあなたがたの行いを失敗させない。 

 

     36. この世の生活は,(一時の)遊びや戯れに過ぎない。あなたがたが信仰して自分の義務を果すならば,かれはあなたがたに報奨を与える。あなたがたは財産(の放棄)を求められているのではない。 

 

     37. もしかれがそれをあなたがたに求められ,強要されるならば,あなたがたは借しくなり,かれはあなたがたの恨・心を暴露されよう。 

 

     38. 見よ,あなたがたは,アッラーの道のために(所有するものの一部の)施しを求められるのである。それなのにあなたがたの中には,貪欲な者がいる。だが貪欲な者は,只自分の魂を損うだけである。アッラーは自足されているが,あなたがたは貧しい。もしもあなたがたが背き去るならば,かれはあなたがた以外の民を代りに立てられよう。それらはあなたがたと同様ではないであろう。

 

48 - 勝利章〔アル・ファトフ〕

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 本当にわれは,明らかな勝利をあなたに授けた。 

 

     2. それはアッラーが,あなたのために過去と今後の罪を赦し,またあなたへの恩恵を果して正しい道に導もいて下さり, 

 

     3. また力強い援助であなたを助けようとなされるためである。 

 

     4. かれこそは,信者たちの心に安らぎを与え,かれらの信心の上に信心を加えられる方である。本当に,天と地の諸軍勢はアッラーの有である。アッラーは全知にして英明であられる。 

 

     5. それもかれが,信じる男たちと信じる女たちを川が下を流れる楽園に入らせて,その中に永遠に住まわせ,かれらの様々な罪業を消滅なされるとの思し召しから。これこそアッラーの御許では偉大な成就である。 

 

     6. またかれは,アッラーについて邪な考えをもつ偽信者や女たち,多神教徒は男も女も懲罰なされる。かれらはアッラーに就いて,悪い見解で臆測する者である。これらの者には非運が巡ってきて,アッラーはかれらに激怒され,崇られ,かれらのために地獄を準備なされる。悪い帰り所である。 

 

     7. 天と地の諸軍勢はアッラーのものである。アッラーは偉力ならびなく英明であられる。 

 

     8. 本当にわれは,実証者,吉報の伝達者また警告者として,あなたを遣わした。 

 

     9. それはあなたがたが,アッラーとその使徒を信じ,またかれ(の教えの宣揚)を助け,かれを尊崇させるためであり,また朝な夕なかれを讃えさせるためである。 

 

     10. 本当にあなたに忠誠を誓う者は,アッラーに忠誠を誓う者である。アッラーの御手がかれらの手の上にあり,それで誰でも誓いを破る者は,自分の魂を損なう者である。また誰でもアッラーとの約束を,果す者には,かれは偉大な報奨を与えるのである。 

 

     11. 後に居残った砂漠のアラブ人たちは,あなたに向かって,「わたしたちは,財産や家族のことに捕われていました。だからどうかわたしたちのために,赦しを祈ってください。」とかれらは,心にもないことを舌の先で言う。言ってやるがいい。「もしもアッラーがあなたがたを害しようと御望・になり,または益しようと御望・になれば,誰があなたがたのために少しでもアッラーの意を翻すことなど出来ようか。」いや,アッラーは,あなたがたの行うことを知り尽される。 

 

     12. いや,使徒と信者たちは,決してその家族の許に帰らないとあなたがたは考え,得意になって,邪念を抱いていた。あなたがたは破滅する民である。 

 

     13. 誰でもアッラーとその使徒を信じないならば,われはそのような不信心の徒に対して燃えさかる火を準備した。 

 

     14. 天と地の大権はアッラーの有である。かれは御望・の者を赦し,また御望・の者を懲罰なされる。本当にアッラーは,寛容にして慈悲深くあられる。 

 

     15. 後に居残った者たちも,あなたがたが出動して戦利品が取れるとなると,「わたしたちを入れてください。あなたがたの御供をします。」と言い,かれらはアッラーの御言葉を変えようと望む。言ってやるがいい。「あなたがたは,決してついて来てはならない。アッラーが既にそう仰せられたのである。」するとかれらは,「あなたがたはわたしたちを恨んでいる。」と言う。いや,かれらは少しも理解しないのである。 

 

     16. あと居残った砂漠のアラブたちに言ってやるがいい。「今にあなたがたは,強大な勇武の民に対して(戦うために)召集されよう。あなたがたが戦い抜くのか,またはかれらが服従するかのいずれかである。だがこの命令に従えば,アッラーは見事な報奨をあなたがたに与えよう。だがもし以前背いたように背き去るならば,かれは痛ましい懲罰であなたがたを処罰されよう。」 

 

     17. ただし,盲人は(出征しなくても)罪はなく,足の障害者や病人にも罪はない。誰でもアッラーとその使徒に従う者は,川が下を流れる楽園に入らされよう。しかし誰でも背き去る者は,痛ましい懲罰が下されるであろう。  

 

     18. かれらがあの樹の下であなたに忠誠を誓った時,アッラーは信者たちに,ことの外御満悦であった。かれはかれらの胸に抱くことを知り,かれらに安らぎを下し,手近な勝利をもって報われた。 

 

     19. そしてかれらは,(その外に)沢山の戦利品を得た。アッラーは偉力ならびなく英明であられる。 

 

     20. アッラーは,あなたがたが得ることになる沢山の戦利品を約束なされた。しかも直ぐにそれを果たされ,あなたがたに(反抗する)人びとの手を押えられた。それは信仰する者への印であり,またあなたがたを正しい道に導くためである。 

 

     21. またかれはいまだにあなたがたの力の及ばないものをも(約束されたが),アッラーはしっかりと取り囲んでいる。本当にアッラーは凡てのことに全能であられる。 

 

     22. 不信心者たちが,あなたがたと戦ったとしても,かれらはきっと背を向けよう。かれらには,保護者も救助者もいない。 

 

     23. これは昔からの,アッラーの慣行である。あなたはアッラーの慣行には,少しの変更も見い出せない。 

 

     24. またかれこそは,マッカの谷間であなたがたからかれらの手を,また,かれらからあなたがたの手を押えられた方であり,その後かれは,あなたがたにかれらに対し好結果を与えられた。本当にアッラーは,あなたがたの行うことの監視者であられる。 

 

     25. かれらこそは(啓示を)拒否し,あなたがたを聖なるマスジドから妨げ,また供物がその犠牲の場に達することを妨げた者である。またあなたがたが,(かれらと混じり住む)信仰する男や女たちを,知らずに踏・躪って,無意識に罪を犯さないよう (あなたがたの手を押えられた)。かれは御心に適う者をその慈悲の中に入らせられる。もしかれら(善男善女)が(はっきりと)分れていたならば,われは痛ましい懲罰で不信の徒を懲罰していたであろう。 

 

     26. あの時不信心な者たちは,胸の中に慢心の念を燃やした。ジャーヒリーヤ(時代のような)無知による慢心である。それでアッラーは,使徒と信者の上に安らぎを下し,かれらに自制の御言葉を押し付けられた。これはかれらがその(安らぎ)に値し,またそれを受けるためであった。アッラーは凡てのことを知っておられる。 

 

     27. 本当にアッラーは,使徒のためにかれの夢を真実になされた。もしアッラーが御望・なら,あなたがたは,安心して必ず聖なるマスジドに入り,あなたがたの頭を剃,または(髪を)短かく刈り込んで(ハッジやオムラを全うする)。何も恐れることはないのである。かれはあなたがたが知らないことを知っておられる。そればかりか,かれは手近な一つの勝利を許された。 

 

     28. かれこそは,導きと真実な教えをもって,それを凡ての宗教の上に宣揚するため,かれの使徒を遺わされた方。本当にアッラーは立証者として万全であられる。 

 

     29. ムハンマドはアッラーの使徒である。かれと共にいる者は不信心の者に対しては強く,挫けず,お栗いの間では優しく親切である。あなたは,かれらがルクウしサジダして,アッラーからの恩恵と御満悦を求めるのを見よう。かれらの印は,額にあるサジダによる跡である。(ムーサーの)律法にも,かれらのような者の譬えがあり,(イーサーの)福音にも,かれらのような譬えがある。それは蒔いた種が芽をふき,丈夫な茎を伸ばして,種を蒔いた者を喜ばせるようなもの。それで不信者たちは,かれらに憤激することであろう。だがアッラーは,かれらの中で信仰して善行に勤しむ者に,容赦と偉大な報奨を約束なされる。

 

49 - 部屋章〔アル・フジュラー

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 信仰する者よ,あなたがたはアッラーとその使徒を差し置いて勝手な振舞いをしてはならない。アッラーを畏れなさい。本当にアッラーは全聴にして全知であられる。 

 

     2. 信仰する者よ,あなたがたの声を預言者の声よりも高く上げてはならない。またあなたがたが栗いに声高に話す時のように,かれに大声で(話して)はならない。あなたがたの気付かない中に,自分の行いを虚しくしないために。 

 

     3. 本当にアッラーの使徒の前でその声を低くする者は,アッラーがその心の敬虔さを試・られた者である。かれらには,赦しと偉大な報奨があろう。 

 

     4. 本当に部屋の外から大声であなたを呼ぶ者の多くは,思慮分別のない者である。 

 

     5. もしかれらが,あなたの出て来るのを待つならば,それはかれらのためにも良い。本当にアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。 

 

     6. 信仰する者よ,もし邪な者が情報をあなたがたに(?)したならば,慎重に検討しなさい。これはあなたがたが,気付かない中に人びとに危害を及ぼし,その行ったことを後悔することにならないためである。 

 

     7. あなたがたの間にアッラーの使徒がいることを知れ。かれがもし多くの事柄に就いてあなたがたに従ったならば,あなたがたはきっと不幸に陥ったことであろう。だがアッラーは,あなたがたに信仰を好ましいものとなされ,またあなたがたの心を,それに相応しくして,あなたがたに不信心と邪悪と反逆を嫌うようになされた。これは正しく導かれた者である。 

 

     8. それもアッラーからの御恵・であり,恩恵である。アッラーは全知にして英明であられる。 

 

     9. もしも信者が2つに分れて争えば,両者の間を調停しなさい。もしかれらの一方が他方に対して,(一方的に)無法なことをするならば,無法者がアッラーの命令に立ち返るまで戦いなさい。だがかれらが立ちかえったならば,正義と公平を旨としてかれらの間を調停しなさい。本当にアッラーは公正な者を愛される。 

 

     10. 信者たちは兄弟である。だからあなたがたは兄弟の間の融和を図り,アッラーを畏れなさい。必ずあなたがたは慈悲にあずかるのである。 

 

     11. 信仰する者よ,或る者たちに外の者たちを嘲笑させてはならない。それら(嘲笑された方)がかれらよりも優れているかも知れない。女たちにも外の女たちを(嘲笑させては)ならない。その女たちがかの女たちよりも,優れているかも知れない。そして栗いに中傷してはならない。また綽名で,罵り合ってはならない。信仰に入った後は,悪を暗示するような呼名はよくない。それでも止めない者は不義の徒である。 

 

     12. 信仰する者よ,邪推の多くを祓え。本当に邪推は,時には罪である。無用の詮索をしたりまた栗いに陰日してはならない。死んだ兄弟の肉を,食べるのを誰が好もうか。あなたがたはそれを忌・嫌うではないか。アッラーを畏れなさい。本当にアッラーは度々赦される方,慈悲深い方であられる。 

 

     13. 人びとよ,われは一人の男と一人の女からあなたがたを創り,種族と部族に分けた。これはあなたがたを,栗いに知り合うようにさせるためである。アッラーの御許で最も貴い者は,あなたがたの中最も主を畏れる者である。本当にアッラーは,全知にして凡ゆることに通暁なされる。 

 

     14. 砂漠のアラブたちは,「わたしたちは信仰します。」と言う。言ってやるがいい。「あなたがたは信じてはいない。ただ『わたしたちは入信しました』と言っているだけで,信仰はまだあなたがたの心の中に入ってはいない。もしあなたがたが,アッラーとその使徒に従うなら,かれはその行いに就いて,少しも(報奨を)軽減されることはない。本当にアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。 

 

     15. 本当に信者とは,一途にアッラーとその使徒を信じる者たちで,疑いを持つことなく,アッラーの道のために,財産と生命とを捧げて奮闘努力する者である。これらの者こそ真の信者である。」 

 

     16. 言ってやるがいい。「あなたがたは自分の宗教を,アッラーに教えようとでも(思うのか)。アッラーは天地にある凡てのものを知っておられる。本当にアッラーは凡てのことを熟知しておられる。」 

 

     17. かれらは,自分がイスラームに帰依して,あなたに対する恩を施したように思っている。言ってやるがいい。「あなたがたの帰依は,わたしヘの恵・とはならない。もしあなたがたが真実(帰依した)なら,アッラーは,あなたがたを信仰に導くことを,あなたがたへの恵・となされるのである。」 

 

     18. 本当にアッラーは,天と地の奥義を知っておられる。アッラーは,あなたがたの所行をよく洞察なされる方である。

 

50 - フ章

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. カーフ。栄光に満ちたクルアーンによって誓う。 

 

     2. いや,かれらは自分たちの間から一人の警告者が現われたことに驚き,そこで不信心な者たちは言う。「これは全く不思議なことである。 

 

     3. わたしたちが死んで塵になって(また甦るの)か。それは(理解出来ない)とんでもない甦りである。」 

 

     4. われは大地が,かれらを如何に蝕・去るかを知っている。またわが手許には,(凡ゆる始終の)記録の帳簿がある。 

 

     5. 真理が訪れた時,それを虚偽としたので,かれらは混乱状態に陥った。 

 

     6. かれらは頭上の天を見ないのか。われが如何にそれを創造し,如何にそれを飾ったか。そしてそれには,少しの傷もないと言うのに。 

 

     7. また,われは大地をうち広げ,その上に山々を据え,様々の種類の美しい(草木)を,生い茂らせる。 

 

     8. (それらは)悔悟して(主の御許に)返る凡てのしもべが,よく観察すべきことであり,教訓である。 

 

     9. われはまた,祝福する雨を天から降らせて,果樹園や収穫の穀物を豊かに生長させる。 

 

     10. びっしりと実を付けた丈の高いナツメヤシの木は, 

 

     11. (アッラーの)しもべたちの食料。またそれ(雨)でわれは死んだ大地を甦らせる。呼出し(復活)にしても同じようなこと。 

 

     12. かれら以前も,(使徒を)嘘付き呼ばわりした者があった。ヌーフの民も,ラッスの仲間もサムードも, 

 

     13. またアードの民も,フィルアウンも,ルートの同胞も, 

 

     14. また森の仲間またトッバウの民も皆使徒を嘘付き呼ばわりした。だから(われの)警告は確実に実現されてしまった。 

 

     15. 最初の創造のために,われが疲れたというのか。いや,かれらは新しい創造に就いて疑いを抱いている。 

 

     16. 本当にわれは人間を創った。そしてその魂が囁くことも知っている。われは(人間の)脛動脈よりも人間に近いのである。 

 

     17. 見よ,右側にまた左側に坐って,2人の(守護の天使の)監視者が監視する。 

 

     18. かれがまだ一言も言わないのに,かれの傍の看守は(記録の)準備を整えている。 

 

     19. そして実際に死の昏睡が訪れる。これはあなたが避けてきたもの。 

 

     20. そしてラッパが吹かれる。これはあの約束された日である。 

 

     21. そして各々の魂は,追手と証言者に伴われて来る。そして各々の魂は,(羊の群を追い立てるように)追手(の天使)一人と(現世の諸行を証言するための)証言(の天使)一人に伴われてやって来る。 

 

     22. (その時,言われよう。)「あなたは,この(審判の日)に就いて実際注意しなかった。われは今,あなたから覆を取り除く。今日は,あなたの視覚は鋭敏である。」 

 

     23. かれの同伴の仲間は言う。「これが,わたしの準備したものです。」 

 

     24. (その時主は仰せられよう。)「あなたがた両名,反逆した頑迷な者を凡て,地獄に投げ込め。 

 

     25. 正しい道を妨げた者,掟を破った者,(真理に)疑いを抱いた者, 

 

     26. アッラーと同位に外の神を立てた者,あなたがた両名は,これらを厳しい懲罰の中に投げ込め。」 

 

     27. かれの仲間は言う。「主よ,わたしがかれを背かせたのではありません。かれが(自ら)遠く迷い込んでしまったのです。」 

 

     28. かれは仰せられよう。「われの前で議論してはならない。われは即にあなたがたに警告したのである。 

 

     29. われは言ったことを変えることはない。またわれのしもべたちに対し,決して不正ではないのである。」 

 

     30. その日われが地獄に,「満員になったか。」と問うと,「なお多くの(入る)者がおりますか。」と答える。 

 

     31. 主を畏れる者には,楽園が近づいてくる。直ぐ近くに。 

 

     32. これは悔悟して常に(アッラーに)帰り(主の掟を)守る凡ての者のために約束されていたものであり, 

 

     33. 目に見えない慈悲深き御方を畏れ,心の底から悔悟して(主に)帰った者たちのため(のものである)。 

 

     34. 「安んじてそれに入れ。これは永遠の日である。」 

 

     35. かれらのためにはそこに,欲しいものは何でもあり,またわが許からもっと追加があろう。 

 

     36. われはかれら以前に,如何に多くの世代を滅ぼしたことか。かれらは,これら(マッカの多神教徒)よりも力においてもっと勇猛であったではないか。それでかれらは諸都市を巡り歩いたが,何処に避難所があろうか。 

 

     37. 本当にこの中には心ある者,また耳を傾ける者,注視する者への教訓がある。 

 

     38. われは天と地,またその間にある凡てのものを6日の間に創造した。しかしわれは少しの疲れも感じることはなかった。 

 

     39. それであなたはかれらの言うことを忍び,主の栄光を誉め讃えなさい。太陽が登る前と沈む前に。 

 

     40. また夜も,かれを讃えて唱念しなさい,また礼拝の終りにも。 

 

     41. 耳を傾けなさい。召集者が直ぐ近い所から呼ぶ日に(備えて)。 

 

     42. その日,かれらは真実の一声を聞こう。それは(墓場から)出て行く日である。 

 

     43. 本当にわれは生を授け,また死を与える。われに(凡てのものの)帰着所がある。 

 

     44. その日,大地はかれら(の所)から裂け,かれらは急いで出て行く。これこそが召集で,われにとっては容易な業である。 

 

     45. われはかれらの言うことを良く承知している。あなたはかれらに強制してはならない。わが警告を恐れる者たちに,クルアーンによって訓戒しなさい。

 

51 - 撤き散らすもの章〔アッ・

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 広く撤き散らす(風)にかけて, 

 

     2. 重く(雨を)運ぶ(雲)にかけて, 

 

     3. 安々と走る(船)にかけて, 

 

     4. 御命を奉じて配付を司るものにかけて(誓う)。 

 

     5. あなたがたに約束されたことは,真実で, 

 

     6. 本当に審判は,必ず下る。 

 

     7. おびただしい軌道をもつ天にかけて(誓う)。 

 

     8. 本当にあなたがたは,信条がまちまちで, 

 

     9. これ(復活の信仰)から背く者は,(真実から)背き去る者である。 

 

     10. 臆測者は処罰されよう。 

 

     11. 混乱の洪水の中でぼんやりしている者, 

 

     12. かれらは,「審判の日は何時のことですか。」と問う。 

 

     13. (それは)かれらが,火獄で試・られる日。 

 

     14. (言ってやるがいい。)「あなたがたの責め苦を味わえ。これこそあなたがたが,催促していたものである。」 

 

     15. だが主を畏れ(敬虔であっ)た者は,楽園と泉に(住・), 

 

     16. 主がかれらに授けられる物を授かる。本当にかれらは,以前善行に動しんでいた。 

 

     17. かれらは,夜間でも少しだけ眠り, 

 

     18. また黎明には,御赦しを祈っていた。 

 

     19. またかれらの財産には,乞う者や,乞うこともできない困窮者たちの権利があると認識していた。 

 

     20. 地上には信心深い者たちへの種々の印があり, 

 

     21. またあなたがた自身の中にもある。それでもあなたがたは見ようとしないのか。 

 

     22. 天には,あなたがたへの糧と,あなたがたに約束されたものがある。 

 

     23. それで天と地の主にかけて(誓う)。本当にそれは真実である。丁度あなたがたが話すことが(事実で)あるように。 

 

     24. あなたがたは,イブラーヒームの尊い賓客たちの物語を聞いたのか。 

 

     25. かれらはかれ(イブラーヒーム)の家に入って,「平安あれ。」と言った時,かれも「平安あれ。見知らぬ方々よ。」と答えた。 

 

     26. それでかれはそっと家族のところに引き返し,肥えた仔牛(の焼肉)を持って出て, 

 

     27. それをかれらの前に置いた。(だが手を付けないので)かれは言った。「あなたがたは,召し上りませんか。」 

 

     28. かれは,かれら(賓客)が薄気味悪くなり,心配になった。かれらは「恐れるには及びません。」と言い,やがて,かれに賢い息子が授かるであろうという吉報を伝えた。 

 

     29. するとかれの妻は声をあげて進・出て,額を打って,「わたしは老婆で,石女ですのに。」と言った。 

 

     30. かれらは言った。「あなたの主がこう仰せられたのです。本当にかれは英明にして全知であられます。」