PART 28

 

58 - 抗弁する女章〔アル・ムジ

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. アッラーは,自分の夫に就いてあなたに抗弁し,なおアッラーに不平を申し立(て祈)る女の言葉を御聞きになられた。アッラーは,あなたがた両人の議論を御聞きになられた。本当にアッラーは全聴にして全視であられる。 

 

     2. あなたがたの中で,ズィハールによって,その妻を遠ざける者がある。しかしかの女らはかれらの母ではない。母はかれらを生んだ者以外にはないのである。実にかれらの言うことは不法な,虚偽の言葉である。本当にアッラーは寛容にしてよく罪を赦される。 

 

     3. ズィハールを宣言してその妻を遠ざけた者が,後にその言ったことを撤回しようとする時は,両人が栗に触れる前に,一人の奴隷を解放しなければならない。これは,あなたがたに戒告されたことである。アッラーは,あなたがたの行うことを熟知なされる。 

 

     4. しかし(解放する奴隷を)持たない者は,両人が栗に触れる前に,2ヶ月続けて斎戒しなさい。それをなし得ない者は,60人の貧者に食を与えなさい。これは,あなたがたにアッラーと使徒を信じさせるためである。これらがアッラーの掟である。不信者に対しては痛ましい懲罰があろう。 

 

     5. 本当にアッラーと使徒を拒否する者は,かれら以前の者たちが,卑しめられたように卑しめられるであろう。われは明白な印を下している。不信者に対しては,恥ずべき懲罰があろう。 

 

     6. その日アッラーはかれらを一斉に甦らせ,かれらの行ったことを告げられる。かれらはその事を忘れているが,アッラーはそれを計算に入れられる。本当にアッラーは凡てのことを実証される御方である。 

 

     7. あなたは,天地にある凡てのものをアッラーが知っておられることを知らないのか。3人で秘密の相談をしてもかれは4人目に常におり,5人の時もかれらの6人目に常におられる。それより少くてもまた多くても,かれらが何処にいようとも,かれはかれらと共におられる。それで審判の日には,かれはかれらの行ったことを,かれらに告げられる。本当にアッラーは凡てのことを熟知なされる。 

 

     8. あなたは,秘密の相談を禁じられた者たちが,その後禁じられたことに返っているのを見なかったのか。かれらは罪悪と敵意と使徒への犯意とで,密議したではないか。またかれらがあなたのもとに来た時,アッラーがあなたに対して決して挨拶されなかった言葉(死を意味する呪いの言葉など)で,あなたに挨拶しておいて(罵って)からかれらは仲間うちで,「何故アッラーは,わたしたちの言ったことを罰さないのだろうか。」と言う。かれらには地獄で十分である。かれらはその中で焼かれよう。何と悪い帰り所であることよ。 

 

     9. あなたがた信仰する者よ,あなたがたが秘密の相談をする時は,罪と敵意と,使徒への犯意とで密議してはならない。善意と敬神の念をもって相談しなさい。アッラーの御許に,あなたがたは集められるのである。かれを畏れなさい。 

 

     10. 秘密の相談は,悪魔による(示唆)だけで,信仰する者たちを悲嘆させるためのもの。だがアッラーの御許しがない限り,少しもかれらを害することは出来ない。それで信者たちに,アッラーを信じさせなさい。 

 

     11. あなたがた信仰する者よ,集会のおりに(広く)席をあけなさいと言われた時は,直ぐ席を譲れ。アッラーはあなたがたのために(十分な)席を与えられる。また立ち上るよう言われた時は,直ぐ立て。アッラーはあなたがたの中信仰する者や,知識を授けられた者の位階を上げられる。本当にアッラーは,あなたがたの行う一切を熟知なされる。 

 

     12. 信仰する者よ,あなたがたが使徒に私的な相談をする時は,相談を始める前にまず施し〔サダカ〕をしなさい。それはあなたがたのために最も良く,また最も清廉なことである。もし(それが)出来なくても,本当にアッラーは寛容にして慈悲深くおわします。 

 

     13. あなたがたは,私的な相談を始める前に施しをすることを尻込・するのか。仮にそれを行わず,アッラーがあなたがたに悔悟を赦された場合は,礼拝の務めを守り,定めの喜捨をし,アッラーと使徒に従いなさい。アッラーはあなたがたの行う一切を熟知なされる。 

 

     14. あなたは,アッラーの怒りを被った人びとを友とする者に,気付かないのか。かれら(偽信者)はあなたがた(の仲間)でもなく,またかれら(の仲間)でもない。かれらは知っていながら,偽りの誓いをたてる。 

 

     15. アッラーはかれらのため,厳しい懲罰を備えられる。本当にかれらの行うことは大悪である。 

 

     16. かれらは誓いを(かれらの悪行の)隠れ場とし,アッラーの道から(人びとを)阻む。かれらは恥ずべき懲罰を受けるであろう。 

 

     17. かれらの富も子女も,アッラーに対しては,少しも役立たない。かれらは業火の仲間である。永遠にその中に住むであろう。 

 

     18. アッラーが,一斉にかれらを復活させる日,かれらは(現世で)あなたがた(ムスリム)に誓ったようにかれに(ぬけぬけと信者であると)誓い,かれらは(これによって)来世でも何とかなると思っている。いやとんでもない。かれらは本当に虚言の徒である。 

 

     19. 悪魔がかれらを支配し,アッラーを念うことを忘れさせた。かれらは悪魔の仲間である。本当に悪魔の仲間は損失者である。 

 

     20. アッラーと使徒に反抗する者は,最も卑しい者の仲間である。 

 

     21. アッラーは,「われとわが使徒たちは必ず勝つ。」と規定なされた。本当にアッラーは,強大にして偉力ならびなき御方であられる。 

 

     22. あなたは,アッラーと終末の日を信じる民が,アッラーと使徒に反抗するような者と親交を結ぶところを見ないであろう。仮令かれらがかれらの父や,子,兄弟や親族であっても。かれはこれらの者の心の中に信仰を書き留められ,親しく聖霊によって強められる。また川が下を流れる楽園に入らせ,永遠にその中に住ませられるのである。アッラーはかれらを愛でられ,かれらもかれに満悦すろ。これらは,アッラーの一党(信者)の者である。本当に,アッラーの一党の者こそ,非常な幸福を成就する者である。

 

59 - 集合章〔アル・ハシュル〕

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 天にあり地にある凡てのものは,アッラーを讃える。本当にかれは偉力ならびなく英明であられる。 

 

     2. かれこそは,啓典の民の中の不信心な者を,その住まいから最初に追い出し放逐された方である。あなたがたはかれらが退去するものとは考えなかった。またかれらにしても,その砦だけでアッラー(の攻撃)を防げると思っていた。だがアッラーはかれらの予期しなかった方面から襲い,かれらの心に怖気を投げ込・,それでムスリムたちと一緒になって,自分(自ら)の手で,かれらの住まいを破壊した。あなたがた見る目を持つ者よ,訓戒とするがいい。 

 

     3. アッラーは,仮令かれらに対し,放逐と御決めにならなくても,必ず現世においてかれらを懲罰なされる。また,来世においては(必ず)火獄の懲罰がある。 

 

     4. それはかれら(不信者)が,アッラーとその使徒に反抗したためである。誰でもアッラーに反抗するならば,本当にアッラーは懲罰に厳重であられる。 

 

     5. あなたがたが,ナツメヤシの木を切り倒しても,またその根の上に立たせて置いても,それはアッラーの御許しによるもので,アッラーの掟に背く者たちを卑しめられるためである。 

 

     6. またアッラーが,かれらから(取り上げて)かれの使徒に与えた物は,あなたがたが,馬やラクダを駆りたてて手に入れた訳ではない。だがアッラーは,御望・の者を使徒の権限の下に委ねられる。本当にアッラーは,凡てのことに全能であられる。 

 

     7. アッラーが(敵の)村の民から得て使徒に与えた物は,アッラーの有であり,また使徒や近親,孤児,貧者,旅人のものである。それはあなたがたの中の,只富裕な者の間に専らわたらせないためである。また使徒があなたがたに与える物はこれを受け,あなたがたに禁じる物は,避けなさい。アッラーを畏れなさい。本当にアッラーは懲罰に厳重であられる。 

 

     8. (戦利品は)貧困な移佳者たちのものでもある。かれらは自分の家から追われ,また財産から離れ,アッラーの恩恵と御喜びを求めて,アッラーと使徒を助けている。これらの者こそ,真実な者である。 

 

     9. そして以前から(アル・マディーナに)家を持っていて,信仰を受け入れた者たちは,(移住して)かれらのもとに来た者を愛護し,またかれら(移住者〔ムハージル〕)に与えられた(戦利品)に対しても心の中で欲しがることもなく,自分(援助者〔アンサール〕)自身に先んじて(かれらに)与える。仮令自分は窮乏していても。また,自分の貪欲をよく押えた者たち。これらの者こそ至福を成就する者である。 

 

     10. かれら(移住者,援助者)の後に来た者たちは,(祈って)「主よ,わたしたちと,わたしたち以前に信仰に入った兄弟たちを,御赦し下さい。信仰している者に対する恨・心を,わたしたちの胸の中に持たせないで下さい。主よ,本当にあなたは,親切で慈悲深くあられます。」と言う。 

 

     11. あなたは,偽信者たちが啓典の民の中の不信心な仲間に言うのを見なかったのか。「もしあなたがたが追放されるなら,わたしたちは一緒に出て行くであろう。あなたがたのことに関しては,誰にも決して従わないであろう。またあなたがたがもし攻撃されるならば,わたしたちは必ず助けるであろう。」だがアッラーは,かれらが真に虚言の徒であることを立証なされる。 

 

     12. もしかれらが追放されても,かれら(偽信者)は,決して一緒に出て行かないであろう。もしかれらが攻められても,決して助けないであろう。もしかれら(偽信者)が助けようとしても,必ず背を向けて逃げ,結局かれらは何の助けも得られないであろう。 

 

     13. かれら(ユダヤ人と偽信者)の胸の中では,あなたがたの方がアッラーよりも,ずっと恐ろしいのである。これはかれらが,何も分らない民のためである。 

 

     14. かれらが一緒でも,しっかりと防備した村とか防壁の陰でない限りは戦わないであろう。強いのはかれらの間の闘争心(だけである)。あなたはかれらが団結していると思うであろうが,その心はばらばらである。これはかれらが,知性のない民のためである。 

 

     15. かれら以前にも,つい先頃,自分の行いの悪い結果を味わった者がいたが,かれらにしても同じである。(来世においても)かれらには痛ましい懲罰があろう。 

 

     16. (かれらは)悪魔のように人に向かって,「信仰を捨てなさい。」と言う。(その人が)一度不信心になると,かれは,「わたしはあなたと関わりはない。本当に万有の主アッラーが恐ろしいのである。」と言う。 

 

     17. それで両者(ユダヤ人と偽信者)は最後に,(地獄の)業火に陥ることになり,かれらはその中に永遠に住もう。これが,不義の徒への応報である。 

 

18.あなたがた信仰する者よ,アッラーを畏れなさい。明日のために何をしたか,それぞれ考えなさい。そしてアッラーを畏れなさい。本当にアッラーは,あなたがたの行うことに通暁なされる。 

 

19.あなたがたは,アッラーを忘れた者のようであってはならない。かれは,かれら自身の魂を忘れさせたのである。これらの者はアッラーの掟に背く者たちである。 

 

     20. 火獄の住人と楽園の住人とは同じではない。楽目の住人こそ勝利者である。 

 

21.もしもわれがこのクルアーンを山に下したならば,それはきっと遜って,アッラーを恐れて粉々に砕けるのを見るであろう。こんな譬えを,われは人間に示すのは,恐らくかれらが熟考するであろうと思うからである。 

 

22.かれこそは,アッラーであられる。かれの外に神はないのである。かれは幽玄界と現象界を知っておられ,慈悲あまねく慈愛深き御方であられる。 

 

23.かれこそは,アッラーであられる。かれの外に神はないのである。至高の王者,神聖にして平安の源であり,信仰を管理し,安全を守護なされ,偉力ならびなく全能で,限りなく尊い方であられる。アッラーに讃えあれ。(かれは)人が配するものの上に(高くおられる)。 

 

24.かれこそは,アッラーであられる。造物の主,造化の主,形態を授ける(主であり),最も美しい御名はかれの有である。天地の凡てのものは,かれを讃える。本当にかれは偉力ならびなく英明であられる。

 

60 - 試問される女章〔アル・ム

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. あなたがた信仰する者よ,われの敵であり,またあなたがたの敵である者を,友としてはならない。あなたがたに与えられた真理を拒否しているにも拘らず,密に好意を寄せるのか。かれらは,あなたがたの主,アッラーを信仰しているという理由で,使徒とあなたがたを追放したのである。あなたがたは,われの喜びを願いながら,われのために聖戦に出かけていながら,(一方で)かれらに好意を寄せるのか。われはあなたがたの隠すことも,現わすことも知っている。あなたがたの中このようなことをする者は,本当に正しい道から迷い去った者である。 

 

     2. かれらはもしあなたがたの上手に立てば,あなたがたの敵となり,かれらの手と舌を悪意をもってあなたがたに伸し,あなたがたが不信心になることを望んでいる。 

 

     3. 復活の日においては,あなたがたの親族もまた子女も,あなたがたには役立たないであろう。かれはあなたがたを裁決なされる。アッラーはあなたがたの行うことを御存知であられる。 

 

     4. イブラーヒームやかれと共にいた者たちのことで,あなたがたのため本当に良い模範がある。かれらが自分の人びとに言った時を思い起せ。「本当にわたしたちは,あなたがたとあなたがたがアッラーを差し置いて崇拝するものとは,何の関りもない。あなたがたと絶縁する。わたしたちとあなたがたの間には,あなたがたがアッラーだけを信じるようになるまで,永遠の敵意と憎悪があるばかりである。」イブラーヒームは父親だけにこう言った。「わたしはあなたのために,御赦しを祈りましよう。だがわたしは,あなたのためになるどんな力もアッラーから頂けないでしょう。」(かれは祈った)。「主よ,わたしはあなたに御縋り申し,あなたにだけ悔悟します。わたしたちの行き着く所はあなたの御許ばかりです。 

 

     5. 主よ,わたしたちを不信心者の試練に陥し入れないで下さい。主よ,わたしたちを御赦し下さい。本当にあなたは,偉力ならびなく英明であられます。」 

 

     6. 本当に,アッラーと最後の日に望・を託している者にとって,この(物語の)中には良い模範がある。だがもし背き去る者があっても,本当にアッラーは,自足なされる御方讃美されるべき御方であられる。 

 

     7. アッラーはあなたがたとあなたがたが(今)敵意を持つ者たちとの間に,あるいは友情を起させることもあろう。本当にアッラーは全能であられ,またアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。 

 

     8. アッラーは,宗教上のことであなたがたに戦いを仕掛けたり,またあなたがたを家から追放しなかった者たちに親切を尽し,公正に待遇することを禁じられない。本当にアッラーは公正な者を御好・になられる。 

 

     9. アッラーは只次のような者を,あなたがたに禁じられる。宗教上のことであなたがたと戦いを交えた者,またあなたがたを家から追放した者,あなたがたを追放するにあたり力を選した者たちである。かれらに縁故を通じるのを(禁じられる)。誰でもかれらを親密な友とする者は不義を行う者である。 

 

     10. あなたがた信仰する者よ,婦人の信者が,あなたがたの許に逃げて来た時は,かの女らを試問しなさい。かの女らの信仰に就いては,アッラーが最もよく知っておられる。もしかの女らが信者であることがあなたがたに分ったならば,不信心者の許に帰してはならない。かの女は,かれら(不信心者)には合法(の妻)ではなく,またかれら(不信心者)も,かの女らにとっては合法(の夫)ではない。しかしかれら(不信心者)が(マハルとして)贈ったものは返してやれ。あなたがたが,かの女らにマハルを与えるならば,かの女を娶っても,あなたがたに罪はない。だが不信心な女との絆を,固持していてはならない。あなたが(マハルとして)贈ったものの返還を(不信心者のかの女の夫から)求めてもよい。またかれら(不信者)が贈ったものについては,その返還の要求を(あなたがたに対して求めさせればよい)。これはアッラーの御裁である。かれはあなたがたの間を(公正に)裁決なされる。本当にアッラーは全知にして英明であられる。 

 

     11. あなたがたの妻が,もしあなたがたの許を去り,不信心者の許に走るならば,先方(不信心者の夫)に勝利を納めた暁には,妻に去られた者にその戦利品の中から,マハルとして贈ったものと同額を与えなさい。あなたがたが信奉する,アッラーを畏れなさい。 

 

     12. 預言者よ,あなたの許へ女の信者がやって来て,あなたに対しこう忠誠を誓うならば,「アッラーの外は何ものも同位に崇めません。盗・をしまん。姦通しません。子女を殺しません。また手や足の間で,捏造した嘘は申しません。また正しいことには,あなたに背きません。」(と誓うならば)かの女たちの誓約を受け入れ,かの女たちのために罪を赦されるようアッラーに祈れ。本当にアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。 

 

     13. あなたがた信仰する者よ,アッラーの御怒りを被った者に,友情を持ってはならない。かれらは,不信心者が墓場の(埋葬ず・の)仲間に就いて絶望しているのと同じように,来世に就いて絶望しているのである。

 

 

61 - 戦列章〔アッ・サッフ〕

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

 

 

     1. 天にあり地にある凡ての有は,アッラーを讃える。本当にかれは偉力ならびなく英明であられる。 

 

     2. 信仰する者よ,あなたがたはどうして(自ら)行わないことを口にするのか。 

 

     3. あなたがたが行わないことを口にするのは,アッラーが最も憎まれるところである。 

 

     4. 本当にアッラーの御好・になられる者は,堅田な建造物のように,戦列を組んでかれの道のために戦う者たちである。 

 

     5. ムーサーがかれの人びとに言った時を思い起せ。「人びとよ,どうしてあなたがたはわたしを苦しめるのか。わたしが,あなたがたに(遣わされた)アッラーの使徒であることを,知っているではないか。」それでかれらが常規を踏・はずした時,アッラーはかれらの心を曲げられた。本当にアッラーは,(アッラーの)掟に背く者を御導きになられない。 

 

     6. マルヤムの子イーサーが,こう言った時を思い起せ。「イスラエルの子孫たちよ,本当にわたしは,あなたがたに(遣わされた)アッラーの使徒で,わたしより以前に,(下されている)律法を確証し,またわたしの後に来る使徒の吉報を与える。その名前は,アハマドである。」だがかれが明証をもって現れた時,かれらは,「これは明らかに魔術である。」と言った。 

 

     7. イスラームに招かれていながら,アッラーに就いて虚偽を捏造する者以上に悪を行う者があろうか。アッラーは不義を行う民を御導きになられない。 

 

     8. かれらはアッラーの御光を,口先で消そうと望んでいる。だがアッラーは例え不信心者たちが忌・嫌おうとも御自分の光(イスラーム)を現わした。 

 

     9. かれこそは,導きと真実の宗教を持たせて,御自分の使徒を遺わされた方で,例え多神教徒たちが忌・嫌おうとも,それ(イスラーム)を凡ての宗教の上に高く掲げさせられる。 

 

     10. あなたがた信仰する者よ,われは痛苦の懲罰から救われる一つの取引を,あなたがたに示そう。 

 

     11. それはあなたがたがアッラーとその使徒を信じ,あなたがたの財産と生命をもってアッラーの道に奮闘努力することである。もし分るならば,それはあなたがたのために最も善い。 

 

     12. かれはあなたがたの様々な罪は赦して,川が(木々の)下を流れる楽園に入らせ,アドン(エデン)の楽園における美しい邸宅に住まわせる。それは至福の成就である。 

 

     13. またあなたがたが好む,外(の恩恵)を与えられる。アッラーの御助けと,速かな勝利である。だからこの吉報を信者たちに伝えなさい。 

 

     14. 信仰する者よ,あなたがたはアッラーの助力者になれ。マルヤムの子イーサーが,その弟子たちに次のように言った。「アッラーの(道の)ために,誰がわたしの助力者であるのか。」弟子たちは(答えて),「わたしたちがアッラーの助力者です。」と言った。そのさいイスラエルの子孫たちの一団は信仰し,一団は背を向けた。それでわれは,信仰した者たちを助けて,かれらの敵に立ち向かわせた。こうしてかれらは勝利者となったのである。

 

62 - 合同礼拝章〔アル・ジュム

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 天にあり地にある凡てのものは,アッラーを讃える。(かれは)至高の王者,神聖にして偉力ならびなく英明であられる。 

 

     2. かれこそは文盲の者の間に,かれらの中から使徒を遺わし,印を読・聞かせてかれらを清め,啓典と英知を教えられた方である。本当にかれらは,以前は明らかに邪道にあった。 

 

     3. まだ来ていない(預盲者以降の)人びとにも教えを授けられる。かれは偉力ならびなく英明であられる。 

 

     4. これがアッラーの恩恵である。かれの御心に適う者にこれを与える。アッラーは偉大な恩恵の主であられる。 

 

     5. 律法(守護)の責任を負わされて,その後それを果たさない者を譬えれば,書物を運ぶロバのようなものである。アッラーの印を嘘であるとする者も同様で,哀れむべきである。本当にアッラーは悪い行いの者を御導きになられない。 

 

     6. 言ってやるがいい。「ユダヤ教を信奉する者よ,あなたがたがもし外の人びと以上に,アッラーの御気に入りであると言いはり,それがあくまでも真実であると確心するならば(天国に入れるはずだから今すぐ)死を請い願いなさい。」 

 

     7. だがかれらは,その手で今まで犯した(行いの)ため,決して死を請い願わないであろう。本当にアッラーは不義を行う者を熟知なされる。 

 

     8. 言ってやるがいい。「あなたがたが逃れようとする死は,必ずあなたがたを襲うのである。それから幽玄界と現象界を知っておられる御方に送り返され,かれはあなたがたに自分の所業を告げ知らせる。」 

 

     9. あなたがた信仰する者よ,合同礼拝の日の礼拝の呼びかけが唱えられたならば,アッラーを念じることに急ぎ,商売から離れなさい。もしあなたがたが分っているならば,それがあなたがたのために最も善い。 

 

     10. 礼拝が終ったならば,あなたがたは方々に散り,アッラーの恩恵を求めて,アッラーを讃えて多く唱念しなさい。必ずあなたがたは栄えるであろう。 

 

     11. しかしかれらは,うまい儲けや遊びごとを見かけると,(礼拝のために)立ち上っているあなたを等閑にして,そちらに駆け出す始末。言ってやるがいい。「アッラーの御許(の恩恵)は,遊戯や取引よりも優る。アッラーは,最善の給与者であられる」。 

 

63 - 偽信者たち章〔アル・ムナ

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 偽信者たちがあなたの許にやって来ると,「わたしたちはあなたが,本当にアッラーの使徒であることを証言する。」と言う。アッラーは,あなたが確かに使徒であることを知っておられる。またアッラーは,偽信者たちが真に嘘言の徒であることを証言なされる。 

 

     2. かれらはその誓いを(悪行のための)隠れ場として,アッラーの道から(人びとを)妨げている。本当にかれらの行うことは,憎むべきである。 

 

     3. それは,かれらが一度信仰して,それから不信心になったためで,かれらの心は封じられ,そのためかれらは理解しない。 

 

     4. あなたがかれらを見る時,かれらの(立派な)風体に感心するであろう。かれらが語れば,あなたはその雄弁な言葉に魅せられる。だがかれらは,(何の知識もなく何を言っても分らない)壁に寄りかかっているただの材木のようなものである。かれらはどの叫びも,自分たちのことをいっていると考えている。かれらは敵である。用心しなさい。アッラーよかれらを滅ぼして下さい。何とかれらは(真理から)逸れたことよ。 

 

     5. かれらに向かって,「来なさい。アッラーの使徒が,あなたがたのために御赦しを祈るであろう。」と言うと,あなたはかれらが顔を背けて,微慢に背を向けて去るのを見よう。 

 

     6. あなたがかれらのために御赦しを祈っても,また祈らなくても,かれらにとって同じである。アッラーは,決してかれらを御赦しになられない。本当にアッラーは,(アッラーの)掟に背く者を御導きになられない。 

 

     7. かれらはこう言うのである。「アッラーの使徒と一緒の者に,施しをしてはいけません。かれらは結局解散されるのです。」本当に天と地の宝庫はアッラーの有である。だが,偽信者たちはそれを理解しない。 

 

     8. かれらは,「わたしたちがアル・マディーナに帰れば,そこの高貴な者が卑しい者たちを必ずそこから追うでしょう。」と言う。凡そ栄誉は,アッラーと使徒,そしてその信者たちにある。だが偽信者たちには,これが分らない。 

 

     9. 信仰する者よ,あなたがたの富や子女にかまけて,アッラーを念じることを疎かにしてはならない。そうする者(アッラーを念わない者)は,自らを損う者である。 

 

     10. 死があなたがたを理う前に,われが与えたものから施しなさい。かれは,「主よ,何故あなたは暫くの間の猶予を与えられないのですか。そうすればわたしは喜捨〔サダカ〕をして,善い行いの者になりますのに。」と言う。 

 

11.定められた時がやって来た時,アッラーは誰にも猶予を与えられない。アッラーは,あなたがたの行うことに通暁なされる。

 

64 - 騙し合い章〔アッ・タガー

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 天にあり地にある凡てのものは,アッラーを讃える。大権はかれの有であり,讃美もまたかれに属する。本当にかれは凡てのことに全能であられる。 

 

     2. かれこそは,あなたがたを創られた方である。だがあなたがたの或る者は不信心者でまた,或る者は信者である。本当にアッラーは,あなたがたの行うことを御存知であられる。 

 

     3. (かれは)真理によって天と地を創造なされ,あなたがたを形作って美しい姿になされた。またかれの御許に帰り所はあるのである。 

 

     4. (かれは)天と地における凡てのものを知り,あなたがたの隠すものも,現わすものまでも知っておられる。またアッラーは,胸の中に抱くことを熟知なされる。 

 

     5. 昔の,信仰を拒否した者たちの消息が,あなたがたに達しなかったのか。かれらは悪行の結果を味わい,また痛ましい懲罰を受けた。 

 

     6. それは使徒たちが,様々な明証をもってかれらのもとに来たのにも拘らず,「人間が,わたしたちを導けようか。」と言ったためである。それでかれらは信じょうとせず背き去った。だがアッラーは,何も求められない。アッラーは,満ち足られる御方讃美されるべき御方であられる。 

 

     7. 不信心な者は,甦りなどはないと主張する。言ってやるがいい。「そうではない。主に誓っていう。あなたがたは必ず甦るのである。それからあなたがたの行なったことが,必ず告げ知らされる。それはアッラーにおいては容易なことである。 

 

     8. だからアッラーとその使徒,そしてわれが下した光明を信じなさい。本当にアッラーはあなたがたの行ったことに通暁なされる。 

 

     9. かれがあなたがたを召集なされる集合の日は騙し合いの日である。誰でも,アッラーを信じて,善行に動しんだ者からは,様々な邪悪,不運を払われ川が下を流れる楽園にかれらを入らせ,永遠にその中に住まわせる。これは大いなる勝利(至福)である。 

 

     10. だが信仰を拒否して,わが印を虚偽であるとした者は業火の住人で,その中に永遠に住む。何と悪い帰り所であることよ。 

 

     11. どんな災厄も,アッラーの御許しなく起きることはない。誰でもアッラーを信仰する者は,その心を導かれよう。本当にアッラーは,凡てのことに通暁なされる。 

 

     12. それでアッラーに従え。また使徒に従え。仮令あなたがたが背き去っても,わが使徒の務めは,只明確に(啓示を)宣べ伝えることである。 

 

     13. アッラー,かれの外に神はないのである。それで信者はアッラーに全幅の信頼を寄せなさい。 

 

     14. 信仰する者よ,あなたがたの妻や子女の中にも,あなたがたに対する敵がいる。だからかれらに用心しなさい。だがもしあなたがたがかれらを赦し,大目に・,かばうならば(それもよい)。本当にアッラーは,度々御赦し下される御方,慈悲深い御方であられる。 

 

     15. あなたがたの富や子女は,一つの試・に過ぎない。アッラー,かれの御許に(だけ)偉大な報奨はある。 

 

     16. だから心を尽してアッラーを畏れ,聞きそして従い,また(施しのために)使え,あなたがた自身のために善いであろう。また自分の貪欲に用心する者,かれらは繁栄を成就する者である。 

 

     17. あなたがたがもしアッラーに善い選付をするならば,かれはあなたがたのためにそれを倍加なされ,あなたがたを御赦し下されよう。本当にアッラーは感謝にあつく大度におわします。 

 

     18. また幽玄界も現象界をも知っておられ,偉力ならびなく英明であられる。

 

65 - 離婚章〔アッ・タラーク〕

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 預言者よ,あなたがたが妻と離婚する時は,定められた期限に離別しその期間を(正確に)計算しなさい。あなたがたの主アッラーを畏れなさい。かの女らに明白な不貞がない限り,(期限満了以前に)家から追い出してはならない。また(かの女らを)出て行かせてはならない。これらはアッラーの掟である。アッラーの掟に背く者は,確かに自分の魂を損う者である。あなたは知らないが,アッラーはこの後で,新しい事態を引き起こされるかも知れない。 

 

     2. その期限が満了した時は,立派に留めるか,または立派に別れなさい。そしてあなたがたの中から公正な2人の証人を立て,アッラーに向い証言させなさい。これは,アッラーと最後の日を信じる者に与えられた訓戒である。またアッラーを畏れる者には,かれは(解決の)出ロを備えられる。 

 

     3. かれが考えつかないところから,恵・を与えられる。アッラーを信頼する者には,かれは万全であられる。本当にアッラーは,必ず御意を完遂なされる。アッラーは凡てのことに,一定の期限を定められる。 

 

     4. あなたがたの妻の中,月経の望・の無い者に就いてもし疑いを抱くならば,(命じられた)定めの期間は3ヶ月である。(まだ)月経の無い者に就いても(同様である)。妊娠している者の場合,その期間はかの女が重荷をおろすまでである。本当にアッラーを畏れる者には,かれは事を容易になされる。 

 

     5. これはアッラーが,あなたがたに下された命令である。アッラーを畏れる者には,かれはその諸悪を払われ,かれに対する報奨を増大されるであろう。 

 

     6. かの女たちを,あなたがたの暮している所であなたがたの力に応じて住まわせなさい。かの女らを窮屈にして,困らせてはならない。もし妊娠しているならば,出産するまでの費用を,かの女たちに与えなさい。もしかの女たちがあなたがたのため(子)に授乳する場合は,その報酬を与え,あなたがたの間で,正しく相談しなさい。あなたがた(夫婦)がもし話がまとまらなければ,外の女が授乳してもよい。 

 

     7. 裕福な者には,その裕福さに応じて支払わせなさい。また資力の乏しい者には,アッラーがかれに与えたものの中から支払わせなさい。アッラーは,誰にもかれが与えられた以上のものを課されない。アッラーは,困難の後に安易を授けられる。 

 

     8. どんなに多くの町が,主とかれの使徒たちの命令に背いたことであろう。それでわれは厳しく清算し,・せしめの懲罰でかれらを罰した。 

 

     9. こうしてかれらは,その行いの悪い結果を味わい,最後には結局滅亡した。 

 

     10. アッラーはかれらのために,厳しい懲罰を準備なされる。だから信仰し,思慮ある人びとよ,アッラーを畏れなさい。アッラーは,確にあなたがたに教訓を下され, 

 

     11. 使徒を遣わした。かれがアッラーの印をあなたがたに読誦し,明白に解明するのは,信仰して善行をなす者を,暗黒の深・から光明の中に導き出すためである。凡そアッラーを信仰して善行に勤しむ者は,下に川が流れる楽園に入らされ,永遠にその中に住むのであろ。本当にアッラーは,かれらのために善い御恵・を下される。 

 

     12. アッラーこそは,7層の天と同様に(7層の)大地を,創造なされた方である。(アッラーの)御命令はそれらの間から下って来る。それで,本当にアッラーは,凡てのことに全能であり,またアッラーの御知識が,凡ての事物を確かに包囲なされることを,あなたに分からせるためである。

 

66 - 禁止章〔アッ・タハリーム

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. 預言者よ,アッラーがあなたのために合法とされていることを(アッラーの御好意を求めるためではなく)只あなたの妻たちの御機嫌をとる目的だけで何故自ら禁止するのか。本当にアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。 

 

     2. (人びとよ)アッラーは,あなたがたのために誓いを解消するよう既に御達しがあった。アッラーはあなたがたの守護者であり,全知にして英明であられる。 

 

     3. 預言者が妻の一人(ハフサ)にある秘密を打ち明けた時,かの女(ハフサ)はそれを(アーイシャに)口外したので,アッラーはそのこと(秘密を漏したこと)をかれに知らせた。かれはその一部分を(ハフサに)話し,一部分は伏せて置いた。それでかれが,かの女(ハフサ)にそれを告げると,かの女は,「誰があなたにそれを告げましたか。」と言った。かれは(答えて)言った。「何もかも御存知の御方が,わたしに告げられました。」 

 

     4. もし梅悟してアッラーに帰るならば,あなたがた2人の心は,善いほうに傾く。もし共謀してかれに反抗するならば,アッラーはかれの守護者であられ,またジブリールや,正しい信者たち,更に天使たちも皆(かれの)支持者である。 

 

     5. かれが,もしあなたがたを離婚したならば,かれはあなたがたに優る妻たちを,代りにかれに授けられるであろう。アッラーに服従,帰依し,信心深く誠実で,悔悟して(不断に主に)返り,(謙虚に)礼拝を捧げ,進んで事に当たり斎戒する者で,既婚者もあり処女もあろう。 

 

     6. あなたがた信仰する者よ,人間と石を燃料とする火獄からあなたがた自身とあなたがたの家族を守れ。そこには厳格で痛烈な天使たちが(任命されて)いて,かれらはアッラーの命じられたことに違犯せず,言い付けられたことを実行する。 

 

     7. (かれらは言われるであろう。)あなたがた不信心の者よ,今日は,弁解してはならない。あなたがたは,只あなたがたが行ったことに対して報いられるだけである。 

 

     8. あなたがた信仰する者よ,謙虚に悔悟してアッラーに帰れ。恐らく主は,あなたがたの様々な悪を払い,川が下を流れる楽園に入らせるであろう。その日アッラーは,預言者やかれに従って信じる者たちを,辱しめはしない。かれらの光は,その前方または右方だ閃こう。かれらは(祈って)言うであろう。「主よ,わたしたちのために,光を完全になされ,わたしたちを御赦し下さい。あなたは凡てのことに全能であられます。」 

 

     9. 預言者よ,不信者と偽信者にたいし,奮闘努力しなさい。またかれらに対し強硬であれ。かれらの住まいは地獄である。何と悪い帰り所であることよ。 

 

     10. アッラーは不信者のために実例を示される。ヌーフの妻,そしてルートの妻である。かれら両人は,2人の正しいわがしもべの許にいた。かの女たちは,かれら(夫)にたいして不誠実で,アッラーの御許で何ら得るところはなかった。そして「あなたがた2人は(外の)入る者と一緒に火獄に入れ。」と告げられた。 

 

     11. またアッラーは,信仰する者のために例を示される。フィルアウンの妻である。かの女がこう言った時を思い起しなさい。「主よ,楽園の中のあなたの御側に,わたしのため家を御建て下さい。そしてフィルアウンとその行いから,わたしを救い,不義を行う者から,わたしを御救い下さい。」 

 

     12. またわれは自分の貞節を守ったイムラーンの娘マルヤム(の体内)に,わが霊を吹き込んだ。かの女は,主の御言葉とその啓典を実証する,敬炭な(しもべの)一人であった。