PART 9

 

     88. かれの民の中の高慢な長老たちは言った。「シュアイブよ,わたしたちは,あなたもあなたと一緒に信仰する者たちも,この町から追放するであろう。さもなければ,わたしたちの宗教に返るべきである。」かれは言った。「仮令わたしたちが(それを)忌・嫌っていてもなのですか。 

 

     89. アッラーが,わたしたちをあなたがたの宗教から救助された後,もしわたしたちが(それに)戻ったならば,アッラーに対し嘘を捏造したことになってしまいます。またわたしたちの主,アッラーが御好・にならないならば,それに戻ってくることはわたしたちには不可能です。本当に主は,凡ての事物をその御知識に包容なされます。わたしたちはアッラーを信頼申し上げます。主よ,真理によって,わたしたちと人々の間を裁いて下さい。本当にあなたは裁決に最も優れた方であられます。」 

 

     90. またその民の中の不信者の長老たちは言った。「あなたがたがもしシュアイブに従うならば,きっと失敗者になるでしょう。」 

 

     91. それで大地震がかれらを襲い,かれらはその家の中に平伏していた。 

 

     92. シュアイブを嘘つきと呼んだ者は,そこに住んでなかったようであった。誠にシュアイブを拒否した者たち,かれらは失敗者であった。 

 

     93. それでかれはその民を去って言った。「人びとよ,本当にわたしは御告げを確実にあなたがたに伝え,また助言をしたのである。信仰しない人びとのために,どうしてわたしの心を痛めようか。」 

 

     94. われは一つの町に,預言者を遺わす度に,謙虚になるように,何時も不幸と受難でそこの民を襲った。 

 

     95. それからわれが災厄に替えて幸運を授け,裕福になると,かれらは言う。「わたしたちの祖先も,確かに災難と幸福にあったのです。」それでわれはかれらが気付かない時に,突然懲罰を加えた。 

 

     96. これらの町や村の人びとが信仰して主を畏れたならば,われは天と地の祝福の扉を,かれらのためにきっと開いたであろう。だがかれらは(真理を)偽りであるとしたので,われはかれらの行ったことに対して懲罰を加えた。  

 

     97. 町や村の人びとは,深夜かれらが眠っている間に訪れるわが激怒に対して,安心出来るのであろうか。 

 

     98. また町や村の人びとは,昼間かれらが戯れている間に訪れるわが激怒に対して,安心出来るのであろうか。 

 

     99. かれらはアッラーの計画に対して安心出来るのであろうか。アッラーの計画に対し安心出来るというのは,失敗する(運命にある)者だけである。 

 

     100. そこの(減び去った)住民の後,その地を継いだ者たちにとって,すなわちわれがもし望むならば,自らの罪によって滅ぼすことも出来る。またわれはかれらの心に封印をして,聞く耳を持たなくしてしまうことも出来るということは。 

 

     101. これらは,われがある消息に就いて,あなたに述べた町や村である。使徒たちは,証をかれらに(湾?)した。だがかれらは以前に拒否したので,信じようとはしなかったのである。このようにアッラーは,不信者の心を封じられる。 

 

     102. われはかれらの大部分の者に,契約を(忠実に)果す者を見いだすことが出来ない。寧ろかれらの大部分が確かに主の掟に背く者であることが分った。 

 

     103. それからかれらの後に,われはムーサーを,わが印を携えて,フィルアウンとその長老たちに遣わした,だがかれらはそれを拒否した。それで不義を行う者の最後が,どんなものであるかを見なさい。 

 

     104. ムーサーは言った。「フィルアウンよ,わたしは,万有の主から遺わされた使徒である。 

 

     105. わたしは当然のことながらアッラーに就いて真理の外何も言わない。わたしはあなたがたに,主からの明証を(有?)したのである。だからイスラエルの子孫を,わたしと一緒に行かせなさい。」 

 

     106. (フィルアウンは) 言った。「もしあなたが印を(強?)し,あなたの言葉が真実なら,初めにそれ(証)を現わせ。」 

 

     107. そこでかれは自分の杖を投げた。見なさい。それは明らかに蛇であった。 

 

     108. またかれはその手を伸ばした。見なさい。それは誰の眼にも白かった。 

 

     109. フィルアウンの民の長老たちは言った。「これは老練な魔術師だ。 

 

     110. かれは,この国土からあなたがたを追出そうと望んでいる。さてあなたがたの主張はどうか。」 

 

     111. かれらは(フィルアウン)に言った。「かれとその兄弟をしばらく退かせ,召集者を諸都市に遺わして, 

 

     112. 老練な魔術師をあなたの所に全員呼び出しては。」 

 

     113. そこで魔術師たちはフィルアウンの許に来て言った。「わたしたちが勝ったならば,きっとわたしたちに報奨があるでしょう。」 

 

     114. かれは言った。「そうだ。(その上)わたしはあなたがたを,必ずわたしの側近にするであろう。」 

 

     115. かれらは言った。「ムーサーよ,あなたが投げるのか,それともわたしたちが(先に)投げるのか。」 

 

     116. かれ(ムーサー)は言った。「あなたがたが(先に)投げなさい」そこでかれらは投げて人々の目を惑わし,かれらを恐れさせ,大魔術を演出した。 

 

     117. その時われはムーサーに,「あなたの杖を投げなさい。」と啓示した。すると見よ。それはかれらの瞞ものを(皆)呑・込んでしまった。 

 

     118. こうして真理が現われ,かれらの行ったことは虚しくなり, 

 

     119. かれらは打ち負かされ,縮・上がってしまった。 

 

     120. 魔術師たちは身を投げ出してサジダし, 

 

     121. 言った。「わたしたちは,万有の主を信仰します, 

 

     122. ムーサーとハールーンの主を。」 

 

     123. フィルアウンは言った。「あなたがたは,わたしが許さないうちにかれを信仰するのか。確かにこれはあなたがたの町で企んだ陰謀で,ここの民を追出そうとするのだ。だがあなたがたはやがて知るであろう。 

 

     124. わたしはあなたがたの手と足を,必ず栗違いに切断し,それから皆を十字架にかけるであろう。」 

 

     125. かれらは言った。「本当にわたしたちは,主の許に帰されるのです。 

 

     126. だがあなたがたは,主の印がわたしたちの許に来て,わたしたちが単にそれを信仰するというだけで,わたしたちに報復されるのですか。主よ,わたしたちに忍耐を与え,ムスリムとして死なせて下さい。」 

 

     127. フィルアウンの民の長老たちは言った。「(王様よ)あなたはムーサーとその民が国内を乱し,あなたとあなたの神々を捨てるのを放っておくのですか」かれは言った。「わたしたちはかれらの男児を殺して,女児を生かしておこう。わたしたちは,かれらにたいして権威をもっている。」 

 

     128. ムーサーはその民に言った。「アッラーの御助けを祈り,耐え忍べ。本当に大地はアッラーの有である。かれは御好・になるしもべたちに,これを継がせられる。最後は(主に対し)義務を果す者に,帰するのである。」 

 

     129. かれは言った。「わたしたちは,あなた(ムーサー)がやって来る以前も,またやって来てから後も迫害を被った。」かれは言った。「これは主が,あなたがたの敵を滅ぼし,あなたがたにこの地を継がせ,どのようにあなたがたが行うかを御覧になるであろう。」 

 

     130. われはフィルアウンの一族を,連年飢鐘と,収穫の減少で襲った。恐らくかれらは訓戒を受け入れるであろう。 

 

     131. だがかれらは良いことが来れば,「これはわたしたちにとって当然です。」と言い,悪いことが臨めば, ムーサーとかれと共にいる人びとが(西?)す)不幸だとする。聞け。かれらの凶運は,アッラーの定められるもの。だがかれらの多くは理解しない。 

 

     132. かれらは言った。「あなたがどんな印を(?)してわたしたちを魅惑しようとしても,わたしたちは決してあなたを信じません。」 

 

     133. そこでわれはかれらに対し,様々な明証として洪水やバッタやシラミ,カエルや血などを送った。だがかれらは高慢な態度を続け,罪深い民であった。 

 

     134. 災厄がかれらに下る度に,かれらは言った。「ム-サーよ,わたしたちのためにあなたと約束されたというあなたの主に祈ってくれ。あなたがもしわたしたちからこの災厄を除くならば,わたしたちはきっとあなたを信じ,イスラエルの子孫をあなたと一緒に,きっと帰らせるであろう。」 

 

     135. だが,定められた期限になって,われがかれらから災厄を除く度に,見なさい。かれらは(その約束を)破ろ。 

 

     136. それでわれはかれらへの報いとして,かれらを海に溺れさせた。これはかれらがわが啓示を拒否し,それを軽視したためである。 

 

     137. われは無力と思われていた民に,われが祝福した東と西の各地を継がせた。(よく)耐え忍んだために,イスラエルの子孫の上に,あなたの主の善い言葉が全うされた。そしてわれはフィルアウンとその民がうち建てたもの,また築造していたものを破壊した。 

 

     138. われはイスラエルの子孫に海を渡らせたが,かれらはある偶像に仕えているある民族のところに来た。かれらは言った。「ムーサーよ,かれらが持っている神々のような一柱の神を,わたしたちに置いてくれ」かれは言った。「本当にあなたがたは無知の民である。 

 

     139. 本当にこれらのものが奉じているものは滅び,またかれらの行うことも無益である。」 

 

     140. かれは言った。「わたしはあなたがたのため,アッラーの外に神を求めようか。かれは諸民族の上に,あなたがたを優遇されているではないか。」 

 

     141. われがフィルアウンの一族から,あなたがたを救った時を思いなさい。かれらはあなたがたを悪い刑罰で悩ましていた。かれらはあなたがたの男児を殺し,女児を生かして置いた。本当にその中には,あなたの主からの,重大な試練があったのである。 

 

     142. またわれはムーサーに(律法を授ける期間として)30夜を約束したが,更に10(夜)を加えた。それで主が定められた期限は40夜となった。ムーサーは,兄弟のハールーンに言った。「あなたはわたしに代って人々を統治しなさい。正しく行動し,悪を行う者の道に従ってはならない。」 

 

     143. ムーサーがわれの約束した時に来て,主がかれに語りかけられた時,かれは申し上げた。「主よ,あなたに拝謁が出来るように,(親しく)わたしに姿を御現わし下さい。」かれは仰せられた。「あなたは決してわれを見ることは出来ない。だがあの山を見よ。もしそれが,相変わらずその所に安定しておれば,そこにあなたはわれを見るであろう。」主がその山に(神の御光を)現わして山を粉・じんにすると,ムーサーは(余りにも恐ろしいので)気絶して倒れた。意識が回復した時かれは言った。「あなたの栄光を讃えます。わたしは悔悟してあなたに帰依し,わたしは信仰する者の先き駆けとなります。」 

 

     144. かれは仰せられた。「ムーサーよ,本当にわれは,わが啓示と御言葉によってあなたを万人の上に選んだ。だからわれの授けたものをしっかりと身に付け,感謝する者の一人となりなさい。」 

 

     145. そしてわれは,かれのために一切の事物に関する訓戒と,凡のことの解釈とを,碑の上に記して(言った)。「これをしっかり守れ。またあなたの人びとに,その中の最も優れた(道)を守るよう命じなさい。われは主の掟に背く者の住まいを,やがてあなたがたに示すであろう。 

 

     146. また地上で正義を無視し,高慢である者に就いては,われが啓示から背き去らせるであろう。それでもかれらは,凡の印を見てもこれを信じない。また公正な道を見ても,それを(自分の)道としない。そして邪悪な道を見れば,それこそ(真の)道であるとしている。これはかれらがわが印を拒否して,それを軽視しているためである。」 

 

     147. わが印と,来世における会見を偽りであるとする者の行いは無効である。かれらの行ったこと以外に,何が報いられようか。 

 

     148. ムーサーの民は,かれの(去った)後,自分の装飾品で鳴き声の出る形だけの仔牛を造った。かれらはそれがものも言わず,また道案内も出来ないことが分らないのか。かれらはそれを(神として)とり,不義を行った。  

 

     149. かれらは自分たちの過ちが分り,酷く悔やんだ時に言った。「本当に主が慈悲を施こされず,またその御赦しがなかったならば,わたしたちはきっと失敗者の仲間であった。」 

 

     150. ムーサーはその民の許に帰った時,激怒し,悲しんで言った。「あなたがたが,わたしの不巧中に行ったことは災いである。あなたがたは主の審判を催促するのか。」かれは板碑を投げ,かれの兄の頭(の髪)(?)んでぐっと引き寄せた。かれ(ハールーン)は言った。「わたしの母の子よ,本当に人びとはわたしを無力だとし,またわたしをほとんど殺さんばかりであった。だからわたし(の手落ち)に対し,敵を喜ばせないでくれ。またわたしを不義の人々と一緒に見なさないでくれ。」 

 

     151. かれ(ムーサー)は(祈って)言った。「主よ,わたしとわたしの兄を赦し,あなたの慈悲に浴させて下さい。本当にあなたは,慈悲深い者の中でも最も慈悲深い方です。」 

 

     152. 本当にこれら,仔牛を(崇拝の対象と)した者たちは主の激怒に触れて,この世の生活でも屈辱を受けるであろう。このようにわれは嘘いつわりを作り出す者に報いる。 

 

     153. しかし悪い行いをした者でも,その後に悔悟して信仰する者にたいしては,本当にあなたの主は寛容にして慈悲深くあられる。 

 

     154. ムーサーは怒りが静まると,板碑を取り上げた。その上には,主を畏れる者への導きと慈悲が記されていた。 

 

     155. それからムーサーは,われ(との会見)の時のために自分の民を70人選んだ。その時大地震がかれらを襲ったので,かれは言った。「主よ,あなたがもし御好・になったならば,(このことの)前に,かれらとわたしを滅ぼされたでしょう。あなたはわたしたちの中の無知な者の行いのために,わたしたちを滅ぼされるのですか,これは,只あなたの試・に過ぎません。あなたは御望・の者を迷わせ,また御望・の者を導かれます。あなたはわたしたちの愛護者であります。それで,わたしたちを赦して,慈悲を施して下さい。あなたは,最も寛容な御方でいらっしゃいます。 

 

     156. またわたしたちのために,現世も来世でも,幸福を授けて下さい。本当にわたしたちは,改峻してあなたの許に戻って来ました。」かれは仰せられた。「われは,自分が欲する者に懲罰を加える。またわれの慈悲は,凡てのものにあまねくおよぶ。それ故われは,主を畏れ,喜捨をなし,またわが印を信じる者にそれを授けるであろう。 

 

     157. かれらは文字を知らない預言者,使徒に追従する者たちである。かれはかれらのもっている(啓典)律法と福音の中に,記され見い出される者である。かれは正義をかれらに命じ,邪悪をかれらに禁じる。また一切の善い(清い)ものを合法〔ハラール〕となし,悪い(汚れた)ものを禁忌〔ハラーム〕とする。またかれらの重荷を除き,かれらの上の束縛を解く。それでかれ(使徒)を信じる者は,かれを尊敬し,かれを助けて,かれと共に下された御光に従う。これらの人びとこそは成功する者たちである。」 

 

     158. 言ってやるがいい。「人びとよ,わたしはアッラーの使徒として,あなたがた凡てに遺わされた者である。天と地の大権は,かれのものである。かれの外に神はなく,かれは生を授け死を与える御方である。だからアッラーと御言葉を信幸する,文字を知らない使徒を信頼しかれに従え。そうすればきっとあなたがたは導かれるであろう。」 

 

     159. ムーサーの民の中で,真理によって(人びとを)導き,またそれによって裁いた一団がある。 

 

     160. われはかれらを12の支部族に分けた。ムーサーの民がかれに水を求めた時,われは,「あなたの杖で岩を打て。」と啓示した。するとそこから12の泉が湧き出で,各支部族は自分の水飲・場を知った。われはまた(厚い)雲でかれらの上に影(の傘)を与え,マンナとウズラを下して,「われがあなたがたに授ける善いものを食べなさい。」(と告げた)。(だがかれらは背いた。)かれらはわれを害したのではない。只自分(の魂)を害しただけである。 

 

     161. かれらに向ってこう仰せられた時を思え。「あなたがたはこの町に住・,勝手に自分の好むものを食べなさい。だが,『御許し下さい』と言い,頭を低くして門を入れ。われはあなたがたの罪過を赦す。善いことをする者には,(報奨を)加えるであろう。」 

 

     162. しかしかれらの中で不義を行う者は,かれらに説明されたものを外の語に言い替え,不義を繰り返したので,われは天から懲罰を下した。 

 

     163. 海蟹の町(の人びと)に就いて,かれらに問え。かれらが安息日(の禁)を破った時のことを,魚群はかれらの安息日に水面に現われやって来ていた。だがかれらが安息日の禁を守らなかった時は,それらはやって来なくなったではないか。このようにわれはかれらを試・た。かれらが主の掟に背いていたためである。 

 

     164. かれらの中の一団がこう言った時(を思え)。「何故あなたがたは,アッラーが絶滅され,また激しい懲罰をしようとされる民に訓戒するのか。」かれら(布教者)は言った。「あなたがたの主に,罪の御許しを願うためである。そうすればかれらは主を畏れるであろう。」 

 

     165. それでかれらが与えられている訓戒を無視した時,われは,悪を避けた者を救い,不義を行う者には恥ずべき懲罰を加えた。(それは)かれらが主の掟に背いていたためである。 

 

     166. それでかれらが倣慢に禁じられていることを犯した時,われはかれらに言った。「あなたがたは猿になれ。軽蔑され,嫌われてしまえ。」 

 

     167. あなたがたの主が,審判の日までかれら(ユダヤの民)に対し,厳しい懲罰を負わせる者を,遣わされ,宣告された時を思え。本当に主は懲罰に迅速で,またかれは本当に寛容にして慈悲深くあられる。 

 

     168. われはかれらを,地上で多数の集団に分散した。そのある者は正しい人物であるが,ある者はそうではない。われは緊栄と逆境でかれらを試・た。恐らくかれらは,(われに)戻ってくるであろう。 

 

     169. それから(不良の)子孫が,かれらの後を継いで啓典を継承したが,かれらは現世の虚しい物を受けとって、「(どんなことでも)必ずわたしたちを御赦しになろう」と言っていた。そしてもし同じような賜り物がかれらに来れば,(また)それを受け入れる。アッラーに関し真理の外,語ってはならないことは,(あなたがたの)啓典での約束ではなかったのか。しかもかれらは,その中にあることを学んでいたではないか。主を畏れる者にとっては,来世の住まいこそ最も優れている。あなたがたは理解しないのか。 

 

     170. 啓典によって(自分の生活を)堅持し,礼拝の務めを守る者,本当にわれは,このような身を修める者への報奨を決して虚しくしない。 

 

     171. われがかれらの上で天蓋のように山を揺り動かし,かれらがそれが自分たちの上に落ちてくると考えた時を思え。(その時われは言った。)「われがあなたがたに授けたもの(啓典)を堅く守り,その中にあることを銘記せよ。そうすればあなたがたは,主を畏れるであろう。」 

 

     172. あなたがたの主が,アーダムの子孫の腰からかれらの子孫を取り出され,かれらを自らの証人となされた時を思え。(その時かれは仰せられた。)「われは,あなたがたの主ではないか。」かれらは申し上げた。「はい,わたしたちは証言いたします。」これは復活の日にあなたがたに,「わたしたちは,このことを本当に注意しませんでした。」と言わせないためである。 

 

     173. 「また,先に神々を崇拝したのはわたしたちの祖先で,わたしたちはその後の子孫です。あなたは,虚偽に従う者が行ったことのためにわたしたちを滅ぼされますか。」と言わせないためである。 

 

     174. このようにわれは,印を詳しく述べる。恐らくかれらは,(われに)戻ってくるであろう。 

 

     175. (ムハンマドよ)われが下した印を授かりながら,それを脱ぎ捨て,それで悪魔が(?)いて,邪道に導く者の仲間となった者の話をかれらに告げなさい。 

 

     176. もしそれがわが意志であったならば,われはそれ(印)によってかれを引きたてたであろう。 だがかれは地上の事に執着して,自分の虚しい私欲に従った。それでかれを譬えて・れば犬のようなもので,もしあなたがそれを叱り付けても,舌を垂れている。また放って置いても,舌を垂れている。これはわが印を信しない者の比(?)である。だからこの(昔の人びとの)物語を告げなさい。恐らくかれらは反省するであろう。 

 

     177. 悪いのは(この)例のように,わが印を偽りであるとし,自らの魂を損っている者たちである。 

 

     178. アッラーが導かれる者は,正しい道の上にあり,迷わせられる者は,等しく失敗者である。 

 

     179. われは地獄のために,ジンと人間の多くを創った。かれらは心を持つがそれで悟らず,目はあるがそれで見ず,また耳はあるがそれで聞かない。かれらは家畜のようである。いやそれよりも迷っている。かれらは(警告を)軽視する者である。 

 

     180. 最も美しい凡ての御名はアッラーに属する。それでこれら(の御名)で,かれを呼びなさい。かれの御名を冒(?)するものは放っておきなさい。かれらはその行ったことにより報いられるであろう。 

 

     181. またわれが創った者の中には,真理によって(人を)導き,またそれに基づき公正に行う一団がある。 

 

     182. わが印を拒否する者は,かれらの気付かないうちに,少しずつ(破滅に)落し入れられるであろう。 

 

     183. かれらには猶子が与えられる。だがわが計画は,強(く免れられな)いのである。 

 

     184. かれらは反省しないのか。かれらの仲間は気が狂ったのではない。かれは明らかに,一人の警告者に外ならない。 

 

     185. かれらは天と地の大権に就いて観察し,またアッラーが創られた凡ての事物に就いて考察しないのか。またかれらに定められた時が,近くに迫っていると考えないのか。かれらはこの後に,どんな教説を信じようとするのか。 

 

     186. アッラーが迷わせられた者に導きはない。かれは,かれらの倣慢さ故に,当てもなく迷うに任せられる。 

 

     187. かれらは(最後の審判の)時に就いて,何時それがやって来るのかとあなたに問うであろう。言ってやるがいい。「それを知る方は,只わたしの主だけである。その時(最後の審判)を知らせて下さるのはかれの外にはない。それ(時)は,天でも地でも重い(重大事となる)。全く突然あなたがたにやって来る。」かれらはあなたが,それに就いて熟知しているかのように尋ねるであろう。言ってやるがいい。「それを知る方は,唯アッラーだけである。」だが人びとの多くは分からない。 

 

     188. 言ってやろがいい。「わたしはアッラーが御好・にならない限り,自分自身のための利害すら自由に出来ない。わたしがもし幽玄界を知っているならば,わたしは善いことを増し,また災厄に会わなかったであろう。わたしは只の一人の警告者で,信仰する者への吉報を知らせる一人の伝達者に過ぎない。 

 

     189. かれこそは,一個の魂(アーダム)からあなたがたを創り,栗いに慰安を得るため,その妻を創られた御方であられる。かれがかの女と交わると,かの女は体内に軽い荷を負ったがそれでもかの女は(安易に)往来していた。そのうち重さが加わるようになると,かれらは両人の主,アッラーに祈って(言う)。「もしあなたが良い子をわたしたちに御授けになれば,わたしたちはきっと感謝を捧げます。」 

 

     190. だがかれが両人に良い(子)を御授けになれば,かれらに授けられたことに対して,かれに同位の者を立てる。だがアッラーは,かれらが立てたものの上に高くおられる。 

 

     191. かれらは何も創れない。またかれら自身が造ったものを,崇拝するのか。 

 

     192. それらはかれらを助けられず,自分自身(さえ)も助けられない。 

 

     193. 仮令あなたがたが導きのため,それらに呼びかけても,あなたに従わないであろう。あなたかたがそれらに呼びかけてもまた黙っていても,あなたがたにとっては同じことである。 

 

     194. 本当にアッラーを差し置いて,あなたがたが祈るものは,あなたがたと同じようにかれのしもベである。もしあなたがたが真実なら,それらを呼んであなたがたの祈りに答えさせなさい。」 

 

     195. それらは歩く足があるのか。持つ手があるのか。また見る目があるのか。聞く耳があるのか。言ってやるがいい。「あなたがたは(かれに配する)神々を呼ベ。直ぐわたしに向かって策謀して・よ。(?)(?)することはない。 

 

     196. 本当にアッラーはわたしの愛護者であり,啓典を啓示された方である。かれは正義の徒を愛護なされる。 

 

     197. だがあなたがたがかれを差し置いて祈るものは,あなたがたを助けることも,自分自身(さえ)も助けることは出来ない。」 

 

     198. もしあなたがかれら(クライシュ族)を正道に招いても,かれらは聞かない。あなたはかれらが,あなたを見守っているのを見よう。だがかれらは見てはいないのである。 

 

     199. (ムハンマドよ)覚容を守り,道理にかなったことを勧め,無知の者から遠ざかれ。 

 

     200. また悪魔からの中傷があなたを悩ました時は,アッラーの加護を求めなさい。本当にかれは全聴にして全知であられる。 

 

     201. 本当に主を畏れる者は,悪魔がかれらを悩ますとき,(アッラーを)念ずればたちどころに(真理に)眼が開くだろう。 

 

     202. だがかれら(悪魔)の兄弟たちは,もっと深くかれらを誤りに引き込もうとして,決して手を緩めない。 

 

203.あなたが一つの印をもかれらに(?)さなかった時,かれらは言う。「あなたは何故それを(自分で)選ばないのか。」言ってやるがいい。「わたしは,只主からわたしに啓示されることに従うだけです。」それは,あなたがたへの主からの啓蒙であり,また信仰する者への導きであり,慈悲である。」 

 

204.それでクルアーンが読誦される時は,それを謹しんで聴き,また静粛にしなさい。恐らくあなたがたは慈悲を受けるであろう。 

205.またあなたがは朝夕,魂を込めて謙虚に,恐れ謹んで,言葉は大声でなく,あなたの主を唱念しなさい。おろそかな者の仲間となってはならない。 

 206.本当にあなたの主の側近にいる者は,かれを崇めるのに慢心することなく,かれの栄光を讃えて唱念し,かれにサジダする。〔サジダ〕 

 

8 - 戦利品章〔アル・アンファ

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. かれらは戦利品に就いてあなたに問う。言ってやるがいい。「戦利品はアッラーと使徒のものである。だからアッラーを畏れて,あなたがたの間の諸関係を公正に処理し,あなたがたが信者ならば,アッラーと使徒に従え。」 

 

     2. 信者は,アッラーのことに話が進んだ時,胸が(畏敬の念で)戦く者たちで,かれらに印が読誦されるのを聞いて信心を深め,主に信頼する者たち, 

 

     3. 礼拝の務めを守り,われが授けたものを(施しに)使う者たち, 

 

     4. これらの者こそ真の信者である。かれらには主の御許にいくつもの段階があり,寛容と栄誉ある給養を与えられる。 

 

     5. そのように主は真理のため,あなたをその家から出て行かせられる。だが信者の一部は,それを好まなかった。 

 

     6. 真理が既に明瞭にされた後でも,かれらはそれに就いてあなたと論議する。それは丁度死を見ていながら,それに向かって追い立てられるかのように。 

 

     7. またアッラーが,(敵の)2つの隊の中,1つはあなたがたのものであろう,と約束された時を思え。その時あなたがたは武装しない一隊が,あなたがたのものであるようにと望んだ。だがアッラーは御自分の御言葉により,真理を真理として立てられ,不信者が,根絶することを望まれる。 

 

     8. 仮令罪のある者たちが嫌がっても,かれは真理は真理とし,虚偽は虚偽として立証されるためである。 

 

     9. あなたがたが主に援助を歎願した時を思いなさい。その時あなたがたに答えられた。「われは,次ぎ次ぎに来る一千の天使であなたがたを助けるであろう。」 

 

     10. アッラーは,只これをあなたがたへの吉報となされ,あなたがたの心をそれで安らげられる。勝利はアッラーからだけ(来る)。アッラーは偉力ならびなく英明な御方であられる。 

 

     11. その時,かれは平安を与え,あなたがたを微睡で包・,また天から雨を降らせ,それであなたがたを清めて,悪魔の汚れを洗い去り,更にあなたがたの心を引き締めて,あなたがたの足場を,これ(雨)によって固められた。 

 

     12. あなたの主が,天使たちに啓示された時を思いなさい。「われはあなたがたと一緒にいるのだ。信仰する者たちを堅固にせよ。」われは不信者たちの心の中に,恐れを染・込ませよう。その時あなたがたはかれらの首を刎ね,またそれぞれの指先を打ち切れ。 

 

     13. これは,かれらがアッラーとその使徒に反抗したためである。アッラーとその使徒に反抗する者には,本当にアッラーは痛烈な懲罰を下される。 

 

     14. これこそは,(主が行われる)不信者への火刑である。あなたがたはそれを味わえ。 

 

     15. 信仰する者よ,あなたがたが不信者の進撃に会う時は,決してかれらに背を向けてはならない。 

 

     16. その日かれらに背を向ける者は,作戦上または(味方の)軍に合流するための外,必ずアッラーの怒りを被り,その住まいは地獄である。何と悪い帰り所であることよ。 

 

     17. あなたがたがかれらを殺したのではない。アッラーが殺したのである。あなたが射った時,あなたが当てたのではなく,アッラーが当てたのである。(これは)かれからの良い試練をもって,信者を試・になられたためである。 本当にアッラーは全聴にして,全知であられる。 

 

     18. このようにアッラーは,不信者の計略を無力になされる。 

 

     19. (不信者よ)もしあなたがたが決定を求めたのならば,その決定はもう来たのである。あなたがたが(不義な事を)止めるなら,それはあなたがたのために最もよい。もしあなたがたが(攻撃を)繰り返すなら,わたしたちも繰り返すであろう。あなたがたの軍勢が仮令多くても,あなたがたにとっては無益であろう。本当にアッラーは,信者たちと共においでになられる。 

 

     20. あなたがた信仰する者よ,アッラーとその使徒に従え。(かれの言葉を)聞きながら,かれに背いてはならない。 

 

     21. また,「わたしたちは聞いた」といいながら,耳を傾けない者のようであってはならない。 

 

     22. 本当にアッラーの御許で最悪の罪人とは,(事理を)理解しない開かない物言わない者である。 

 

     23. アッラーがもしかれらに良いところを認められれば,かれは必ずかれらに聞かせられる。だがかれが仮令聞かせられたとしても,かれらは(辞退して)背き去るであろう。 

 

     24. 信仰する者よ,アッラーと使徒の呼びかけに応えなさい。アッラーが(使徒を通じて)あなたがたを(現世と来世で)生かすために呼びかけたときは。アッラーは,人間とその心の間に入られることを知れ。またあなたがたは,必ずかれに召集されるのである。 

 

     25. また試・の災厄に対して,あなたがたの身を守れ。それはあなたがたの中不義を行う者(だけ)に下るものではない。アッラーは懲罰に厳正であることを知れ。 

 

     26. あなたがたは地上において少数で弱く,虐待されていた時を思いなさい。人びと(マッカの多神教徒たち)があなたがたを,うち滅ぼしてしまうのではないかと恐れた。だがかれは避難所を与えられ,御助けによりあなたがたを強くされ,また種々の清きよいものを与えられた。恐らくあなたがたは,感謝するであろう。 

 

     27. あなたがた信仰する者よ,アッラーとその使徒を裏切ってはならない。また故意に,あなたがたへの信頼を裏切ってはならない。 

 

     28. あなたがたの財産と子女とは一つの試・であり,またアッラーはあなたがたへの最高の報奨を持つ方であることを知れ。 

 

     29. 信仰する者よ,もしあなたがたがアッラーを畏れるならば,かれはあなたがたに識別を与え,あなたがたの諸悪を消滅し赦して下される。本当にアッラーは偉大な恩恵の主であられる。 

 

     30. また不信心者たちが,あなた(ムハンマド)に対し如何に策謀したかを思い起しなさい。あなたを拘禁し,あるいは殺害し,あるいはまた放逐しようとした。かれらは策謀したが,アッラーもまた計略をめぐらせられた。本当にアッラーは最も優れた計略者であられる。 

 

     31. またわが印がかれらに読誦された時,かれらは言った。「わたしたちは(先に)聞いている。もしわたしたちが望むならば,これらと同じことが言えるであろう。本当にこれは,昔の物語に過ぎない。」 

 

     32. またかれらがこう言った時を思いなさい。「アッラーよ,もしこれが本当にあなたからの真理であるならば,わたしたちの上に天から石(の雨)を降らせ,またわたしたちに痛ましい懲罰を科して下さい。」 

 

     33. だがアッラーは,あなたがかれらの中にいる間,懲罰をかれらに下されなかった。またかれらが御赦しを請うている間は,処罰されなかった。 

 

     34. かれらは聖なるマスジドの管理者でもないのに,(アッラーのしもベを)そこに入れまいと妨げたことに対して,アッラーがかれらを処罰されずにおかない。(真の)管理者は(主に対し)義務を果たす者だけである。だがかれらの多くはそれが分らない。 

 

     35. (アッラーの)家におけるかれらの礼拝ぶりは,只ロ笛を吹いて両手で拍手するに過ぎない。あなたがたは不信心であったのだから懲罰を味わえ。 

 

     36. 本当に信じない者たちはアッラーの道から(人びとを)妨げるために,その財資を費やしている。それを費やさせなさい。間もなくそれはかれらの苦悩となり,その中かれらは征服されよう。これら不信心者は地獄に集められるであろう。 

 

     37. それはアッラーが,善良な者から邪悪な者を区別されるためで,かれは邪悪なものを次々と積・重ね一緒にして,地獄に投げ込まれる。これらの者こそ失敗者である。 

 

     38. 不信心の者に言ってやるがいい。「あなたがたが(信者に対する迫害を)止めるならば,過去のことは赦されよう。」だがかれらがもし繰り返すなら,昔の先例が既にあるのだ。 

 

     39. だから,迫害と好計がなくなるまで,また(かれらの)教えがすべてアッラーを示すまで,かれらと戦え。だがかれらがもし(敵対を)止めるならば,本当にアッラーは,かれらの行うことを御存知であられる。 

 

     40. かれらがもし背き去るなら,アッラーはあなたがたの守護者であることを知れ。何とよい守護者であり,また何とよい救助者であられることよ。